中越沖地震による原発の被害報道に比例するように、「原発がどんなものか知ってほしい」と言う文章がまたまた増殖速度を速めています。 以前にこの文章の欺瞞性を指摘しましたが、ほぼ外部リンクに内容を丸投げ状態でした、そこで今回私が持ちうる知識を総動員し、この文章の再検証を行いたいと決意しました。 この日記を見られた方は屹度元文章「原発がどんな・・・・」は他所のリンクで見られた事でしょう。 よってここでは敢えてリンクは張りません。 他方過去にこの文章と正面切って向き合ったサイト及び保護サイトへのリンク http://www.faireal.net/articles/6/12/ さて当該問題文章は全部で21章にも及ぶテキストですので、検証も膨大なテキストになります。 従って数章毎に区切って実施してゆきたいと思います。 本来なら元文章及び消滅反論サイトの両方を掲示し、そこに私の検証を掲載するのが一番なのですが、上に書いた様に余りにも冗長過ぎますので、私の検証結果のみを章単位で述べたいと思います。 なお以降断りが無ければ平井氏作とされる元文章=怪文書と、消滅したサイトの反論を反論文と書く場合がありますのでご容赦願います、何せ2ヶ月程度暇を見つけながら書きつづったものですから。 ※注 この文章は某所に昨年7月に7回に分けて書きつづったもので、今回全部を合体させております。 第一章 私は原発反対運動家ではありません   の検証 ここで一般的に引用される怪文書中の平井氏の経歴ですが、こういうバージョンも存在します。 即ち元文章は複数の人間が係わっており、バージョン違いが多数存在します。 特に本当に平井氏が作ったのか?と言う疑問をかわすためか、最近では編集者の視点で書かれた前文が付加されたバージョンが目に付きます。なおこの章は自己紹介みたいなものですから、重要ではありません。 平井憲夫さんのプロフィール 1938年、岡山県倉敷市生まれ。高校中退後、石油化学プラント建設会社に入社、石油化学プラントの建設工事に携わったのち、日立プラント建設の下請け会社に移り、原発の新設や定期検査の配管工事の現場監督を20年にわたってつとめる。工事を手がけた原発は、福島、浜岡、島根、東海、敦賀などの14基に及び、日本の沸騰水型原発のほとんどに関与した。1級プラント配管技能士。1988年退社。1990年「原発被曝労働者救済センター」を設立、代表として原発工事で被曝する労働者の救済にあたる。原発事故調査国民会議顧問、北陸電力能登(現・志賀)原発差し止め裁判原告特別補佐人、東北電力女川原発差し止め裁判原告特別補佐人、福島第2原発3号機運転差し止め訴訟原告証人として、原発建設現場の実態を法廷で証言するとともに、全国で講演活動を繰り広げる。1997年正月明けにひとり暮らしの自宅で亡くなっているのを発見された。享年58歳。 以上より平井氏は日立プラント建設の下請け会社所属となっているが、日立の現場職制は以下の通り。 電力補修課担当員工事管理員     ←反論文作成者の立場 日立製作所及び直系工事担当指導員  ←私の昔の立場 日立プラント建設工事担当監督 下請け会社工事担当(職長・班長・棒心) ←平井氏の立場 又、平井氏は配管が主担当であるため原発の定期検査工事のメインである機器分解点検等は主担当では有りません、その為に消滅サイトの反論文では議論が噛み合わない面がこれから多々出ます、反論文は機器点検の視点であるからです。反論文を書かれた方は運転管理をされており、そう言う意味合いで、【原発の中のことは殆ど知っている】は反論文を書かれた方に分が有ります(そう言う教育を受けていますから)。 なお申し遅れましたが、この検証文を書いている私の経歴ですが。さる大学で原子力工学関連を6年も掛けて学んだ劣等生です。但し第一種放射線取扱主任者試験に合格しておりますので、この検証文を書く知識程度は備わっていると思っております。又、平井氏の現場経歴が88年までですが、私は81年から現場に入りましたので、約8年程同じ環境の現場で平井氏と働いていた事になります。よってその当時の視点で以後検証します、昔は昔・今は今では不公平でしょうし、その後私は家庭の事情で原子力分野から離れましたので、今の現場を知りません。 なお断っておきますが、私は中途採用された為、それ以前にPWR型の定期検査も経験しております。 但し平井氏がPWR工事に携わった経歴はまず無いだろうと思います。 第二章「安全」は机上の話  の検証 設計がそもそも悪ければ何もなりませんが、施工が悪いと言うのはこの場合新幹線・高速道路橋梁などの例をあげて原発もそうだと誘導されています。 確かにこの問題は特にコンクリート構造物には相当問題が有るのも事実です、但しシャブコン問題が発覚した80年代以降は適切な工事が行われています。 原発の鉄筋は溶接部もキチンと非破壊検査(放射線透過撮影)されていますから、極端な溶け込み不良は無いと言えます。 なお使われる鉄筋はD51と言うものでとてつもない程太いです。 反論文でも触れられていますが、施工が悪いか否かは元文章で何一つ具体例さえ有りません、ケチを付けるなら具体例を上げて指摘すべきでは無いでしょうか。 この章はあくまでも一般論に終始するだけであり、原発工事の何処に何が有ったのかは一切明示されておりません。 なお溶接という工事をご存じ無い方には「溶け込み不良」と言う不具合が判らないと思います。 溶接はハンダ付けとは違います、母材どおしを高温で溶けさせ、そこに溶接材を混合させていくものなのです。従って溶接材のみが溶けてあたかもハンダ付けみたいな状況になるのは不良施工なのです。 こういった状態が溶け込み不良と呼ばれるモノで、溶接部にヒビが入ったり簡単に外れたりします。 鉄筋の溶接は通常末端の溶接工が担当する事が多く、確かに溶接不良が発生しやすいのは事実です。 但し原発工事では検査をしますから、不良施工多発すれば淘汰されるのも事実です。 第三章 素人が造る原発  の検証 この章ではそろそろ元文章が故意の虚偽記載や誇張が幅を利かせ始めました。 平井氏は最高の職人が施工する事が肝心と書かれております、確かにその通りなんですがここで幾つか妙な記述が続きます。 大工や左官の腕と原発工事者を同一視されていますが、平井氏のプロフィール覧にも書かれた様に、配管工事や溶接・・・・・重機操作等色々な仕事には免許や資格が有りますが、原発の建設や改修などの工事では事前に工事担当者全員の名簿が電力補修担当課宛に提出されます。当然必要な免許や資格の届けと一緒に。資格の有無と腕が一致しない例は多々有りますが、最低限クリアした人が携わります。 有能な棒心は確かに必要です、が昔気質の方が多く、20年前ですらシステムの進化に付いて来れなくなった方々が多数いらっしゃったのも事実です。 針金1本で大事故は・・・・・JARO真っ青な誇大表現ですね。原発には不味い事例でも今後明らかになっている不具合事例は引用しますが、東電福島第一原発の調査では数々の異物が炉内から発見されています。しかしそれが原因で事故が起きたか?ノーですね。よって針金1本で事故と言うのは事実無根の妄言です。 工事のマニュアル化を平井氏は批判しています、それに対し反論文はマニュアル化は必要として分解点検の例をあげられています。 平井氏の言うマニュアル化は書かれたとおり、点検では無く建設時の組立のマニュアル化です。 組立ミスや現場溶接作業(その後の非破壊検査も含む)などを軽減する目的で行われますが、平井氏は現場で細かいピースを職人に組立させる方が良いとの主張なのです。 例えば10センチの竹ひご4本で正方形を作るのと、2センチの竹ひご20本組み合わせて同じ正方形を作るとして、どちらがより正確で早く作れるか?、明らかに前者でしょう。 ましてや現場の空中作業になるような場所での作業より、工場の床面で施される事前溶接では条件が雲泥の差とも言えます。「素人が作れるように・・・・」では無く、工事の精度上昇と工期短縮並びに点検作業の軽減化及び破断事故確率の低減化が主目的です。 例えば三方分岐管を考えましょう、英字のTの字に似てますのでT字管と呼ばれますが、皆さんの家に付いている雨樋にもそんな部分が有りますね。当初の原発もあれと同じで、分岐部分だけのピースに直管を溶接してこの部分を作成していました。現在では直管に台座を直接加工し溶接部分を減らします。 原発の安全を考える場合、大抵の前提が主要配管の溶接部破断事故です。即ち溶接部分が減ればその危険性も低減されるのです。以上から工事のマニュアル化は安全に繋がるものだと判るはずです。 柏崎刈羽原発の6・7号機はABWRと呼ばれる最新型で、BWR名物であった再循環系統配管がインターナルポンプ採用で不要になりました。これも事故確率を下げる為の方策の一つですね。 溶接工の目がやられる・・・・は本当です、但し平井氏及びその周辺の人が主要配管の溶接をやるか?と言うと現実はノーです。 詳しく説明すると長くなりすぎますが、原発の安全性を謳う話に5重の壁と言うモノが有ります。 燃料自体がセラミック・燃料棒被覆管・原子炉圧力容器・原子炉格納容器・原子炉建家ですが、4番目の格納容器は原子炉に何か有った場合に放射性物質の漏洩をくい止める重要な役割を持たされています。 従ってこの部分で隔離される閉系統の重要機器の溶接工事は、平井氏などのようなメーカー外注下請け作業員は絶対に使いません、元請けメーカー子飼いの社員溶接工が実施しますし、随分以前から機械による自動溶接になっています。 平井氏の同僚溶接工などがやるのは、サポートの取付や重要機器分類では下位に位置する補助配管等の炭素鋼のものでしょう。少なくともステンレス製の配管をメーカー外注下請け作業員にさせた例を見たことがありません(BWR・PWR問いません)。 この章では、主張そのものはまともですが、内容は大いに誇張であると判定出来ます。 以下次回に 第四章 名ばかりの検査・検査官  の検証 検査について国及び指定機関の検査員が素人との指摘ですね。 最終点検だけではダメ、工事そのものを見ろとの事ですが、確かにそう言う理屈は正しいでしょう。 とは言え、たたき上げの配管工に検査やらせても無意味で、検査はそれこそ規格や資格が必要です。 重要機器クラスの検査は大方次の様な流れになります(配管工事とします)。 データシート検査 使用する配管自体が規格に適合するか書面及び刻印による現物確認。 開先形状&試験 開先が申請図面通りに加工されているか目視検査及び欠陥が無いかPT検査。 開先合わせ検査 配管の開先同士が規定位置に設定されたか目視及びゲージ検査。 溶接後検査 PT検査は当然ながら放射線透過試験や場合によっては超音波探傷試験も実施。 なお場合によっては初層溶接完了後にPT検査を行う例もある。 耐圧検査全部の工事が終わった時点で、系統を隔離し圧力試験実施。 これらの検査を経て合格となります、クラスが低い配管はこれらの検査過程が幾つか省略され書面だけになる場合もありますが、根本的な安全性への寄与が低い機器ですので問題視すべきでは無いでしょう。 なお2〜3月に騒がれた電力不祥事でも有った筈ですが、一番最後の耐圧試験に絡む不祥事は過去に頻発しました。どういう事かと言えば、試験対象部位を含む前後で系統の隔離を行い、対象部位直近での試験を行うのですが、隔離を行うべき弁等がシートリークを起こす確率が結構有るのです。 本来工事対象では無い部位でのリークですが、結果的に圧力が下がり試験不合格となる。 それを避けるために当該弁等に器具をかましたりしてリークを防止するのです。 この手の最大の不祥事は東電第一原発1号機の格納容器漏洩試験で発覚し、当該原子炉は1年間の運転禁止と言う重い罰を受けました。 また自ら作業できる腕前が無ければ・・・・は噴飯モノです、一般建築確認でも確認する人達は検査技能は有していても決して腕の良い大工ではありません。 「そうではない。よく見ていなさい。このようにするんだ」・・・・と言えるような配管溶接は、前にも書きましたが重要クラスでは小口径配管であり、主要な大径配管は自動溶接になります。 又、クラスにより現場立ち会いが省略されるもあります。 19年2月には関西電力で国の検査を受けなかった溶接が発見されましたが、ウラを返せば重要では無い機器クラスの溶接等は社内検査のみでOkなのです。 運転管理専門官は日常の運転に関する国からの派遣者であり、定期検査工事には無関係です。この辺ごちゃ混ぜに書いてあるので読む人を混乱させます。又内容は各種検証サイトで「インチキ」と証明されています、下記リンクを参照下さい。 http://nucnuc.at.webry.info/200605/article_1.html なお水戸での講演の事が書かれていますが、実は水戸には旧科技庁の原子力部門事務所が有ります、膝元で反原子力集会が有ればこの事務所が全く無関心でしょうか?。 そんな中で元文章中のような発言を職員がすれば大問題に発展すると思います。 この章では検査の意味合いそのものを誤解又は歪曲されています。 第五章 いいかげんな原発の耐震設計  の検証 反論文が指摘しているように、最初の原発から耐震設計になっています。 耐震設計の配管を見たことが無い方が当該配管をご覧になったらビックリされます。何故なら不必要にのたうって最短距離があるのにワザと曲がり距離が遠くなっています。 これは地震動による建物の動きが配管へのダメージを最小にするために設けられています。 又これらの支持金具も必要な処にはダンパーなどで振動を吸収するような構造となっています。 東北電力の非常停止を問題としていますが、この問題を調査すれば判りますが震度と言う物差しが地震の一面しか表しておらず、建物へのダメージはその他の要因も加わり複雑です。 停止信号が発せられ、自動停止に至ったのは正常であり、停止しなかったらその方が問題ですので切り口が誤っています。 即ち同地震で同一区域に建てられた原子炉で挙動が異なっていることに切り込むのが筋でしょう。 今まで原発での各種事故でスクラム信号が発せられて自動停止しなかった案件は皆無です。 『スクラム信号が出たのに止まらない』が問題であって、スクラム信号が出るべきで無い時に信号が出るのは安全側の事象であり、この手の信号は誤差基準が必ず安全側です、 丁度先日起きた柏崎刈羽原発は起動中の4基全てが直ちにシャットダウンしました。 あの様な際にスクラムしないとなったら恐ろしいですね、非常用の補機類も全て正常に機能しておりますが、耐震クラスの低いものが結構壊れました。これら周辺機器の耐震設計は見直さざるを得ないでしょう。 この章では安全工学という面で知識が皆無なのを露呈しました。 第6章 定期点検工事も素人が  の検証 この項は意図的な脚色と実態とはかけ離れた記述が目立ちます、検証では無く実態を正確に書きましょう。 原子力発電所は敷地が広大であり色々な人が作業を営んでいます、この全てが放射線作業従事者ではありません。当然ながら現場とは無関係の事務員や女子社員などから売店や食堂で働く方々も多数います。以下、問題となる放射線管理区域について説明しましょう。 一般管理区域 放射線のレベルが通常の事務所並から計れば計測されるが長時間労働をしてもまず日々管理の制限を越えない区域、いわゆる通路や作業経路などが相当する。外部に開放する資材等の搬入口は全く外のレベルと同じレベルでの管理が行われている。中に入るには別項でも触れた様に作業服を専用服に着替えた上で個人被ばく測定器着用が義務です。また退出時は体表面モニタにより表面汚染の有無を測定しないといけません。 放射性物質による汚染は基本的に「検出限界未満」に管理され、ほんの僅かな汚染が検出されても大騒ぎで除染が実施される。 搬入口等から物品を持ち出す際は必ず電力会社放射線管理員又は委託先管理員のチェックを受け、リストに詳細が記録される。汚染レベルでの区分では通常 A区域 と呼称されることが多い。 高放射線区域 通路等であっても雰囲気線量が高く、長時間留まると日々管理制限値を容易に超える恐れの有る場所で発電所等により名前や区分基準が異なる。例えば線量率レベルで R-1、R-2、R-3など。 運転中のBWRでは給水加熱器など主蒸気が通るエリアは、窒素の同位体元素による高エネルギーガンマ線により非常に高い線量率となる、従ってかような場所は遮蔽壁で囲まれた部屋であり入り口は施錠管理されている。 汚染監視区域 放射性物質汚染が予測される区域、一般管理区域への汚染持ちだしを防止するため、基本的には靴の履き替えや物品持ち出し時には自社放射線管理員の確認を要する。  大概B区域と呼称される 汚染区域 現実に汚染がある又は恐れのある区域。   区分では C区域と呼称される。 この区域に入るには作業服の着替えを要求される、但し普通0.4ベクレル毎平方センチ以下になるよう日々メンテナンスされる。 この4ベクレル毎平方センチを常時超える場所はマスク着用などの措置が取られ、汚染区域の中でも更に靴履き替え等の区域分けがなされる。その様な場所は「重汚染区域」とも呼称される場合がある。 放射線・放射性物質汚染区分によるエリア管理以外にも別の呼称で「立ち入り制限区域」「立ち入り禁止区域」などが設定され理由も併せて表示される。 現在作業エリアのあちらこちらに「この場所に1時間いると○○マイクロシーベルト被ばくします」とか、「この場所の表面汚染密度は40ミリベクレル以下です」などの表示が行われ、作業員への周知が放射線管理員によって行われている。又高放射線雰囲気下では線源である配管等の目立つ場所にその旨と実際の表面線量率が表示され作業員に注意を促していると共に、定期検査開始時に鉛マットなどによって遮蔽が実施される事が多い。 さて原文を読むと放射性物質が付いている→外部ひばくと表現されていますが、完璧な誤りで外部被ばくは殆どが外部ガンマ線によるもので、記述の放射性物質付着は体表面汚染と言うものです。 体表面汚染は高じると放射性物質を体内に取り込む内部被ばくに繋がる要因ですので、厳重に管理されています。従って体表面モニタに引っかかるとサイトに依りますが放射線管理員がすっとんできて原因を調査します。 シャワーを浴びれば大概洗い流せて、おしまいですがこれは東電の昔の状態です。ホットシャワー排水は汚染の可能性を否定できませんから、当然専用タンクに集められホットラボ管理員の検査を受けなくてはいけません。従って現在は管理区域内シャワーの使用が制限されており、汚染検査で異常が発見されなかった人が入れるコールドシャワー利用が奨励されています。 実際ホットシャワードレンタンク容量が少ないPWRではホットシャワーを使う前に放射線管理員が手作業で体表面の除染を行っているはずです。 風呂嫌いの私は1日の仕事終了時のシャワーで風呂代わりにしてました事は内緒です。 なお体表面汚染検査に引っかかる人は、大概の場合放射線管理員の指示を無視し、確信犯的な手抜き作業を繰り返す不良作業員であるのも事実です。又危険性を熟知しながらも取った防御策が不完全であった場合などに発生します。通常の作業で引っかかる率は非常に低く、作業班単位で発生しようものなら担当放射線管理員は上司に相当責められるはずです。 靴に関しては現場には確かに1センチ刻みの靴しか有りませんから合わないのは無理からぬ処です。 靴には一般区域用、汚染監視区域用、汚染区域用と色分けして使用されており、場合によっては25センチの足なのに27センチの長靴しかなかったって場面も有り得ます。 お百姓さんの出稼ぎは否定しません、しかし技能が無い作業員はそれなりの作業しかしません。 即ち作業熟練者が作業に集中出来るようにサポートする業務や、それこそ体力だけ必要なんて仕事が廻されます。しかしこれはやむを得ないでしょう、どこの会社でも新入社員の最初は素人、経験を積むに従ってプロへと変身する訳ですが、本気で取り組むか否かでその後が変わるのも同じです。 ボルトの締め付け作業については後の章にも出ますのでそちらに譲ります。 なお被ばく線量管理については以下の様な流れになります(80年代当時)。 年間許容被ばく線量:国の定める法律上年間制限は無いがその他の条文から5レム/年。 この制限を遵守するため 4レム/年 1レム/3ヶ月 と言う制限枠で運用。 通常1日の管理上限は100ミリレム/日(管轄する労基署に届け出られている)。 なお1レム=10ミリシーベルト。 放射線被ばく線量の評価値はフィルムバッチで行う。 日々の管理はTLD(熱蛍光ルミネセンス線量計)等で実施。 アラームメーターは電力会社の管理手法方針により携帯の義務等運用が違う。 この章では放射線関連知識が相当怪しい事が透けて見えます。 以下次回へ 第七章 放射能垂れ流しの海 の検証 まず、この問題に関しては反対・推進双方の主張は絶対に噛み合いません。 原発は内部で水のリサイクルをやって使いますが、シャワーなどが使われると当然外部由来の水が増加します。幾らタンクが有ろうとも当然いつかは制限を越えますので余剰水を放出しないといけません。 そこで放出しても問題の無い水を放出する訳です。 基本的に汚染の可能性の極めて少ない水、機器補機冷却水ドレンなど(基本的に単なる純水系)はタンク貯蔵しサンプリング測定後に放出。 汚染の可能性のある水の場合、濃縮機で蒸発させ回収した蒸留水をサンプリング計測後放出します。 例として東電の福島第一原子力発電所放出実績が東電のサイトに示されているので参考にして下さい。 http://www.tepco.co.jp/nu/f1-np/data_lib/index-j.html 関西電力はこちらから http://www.kepco.co.jp/knic/library/index.html 過去に遡ると判りますが、放出実績は年々低下傾向に有ります。技術改良により「合理的に達成されるならば、より低く」と言う防護観点の実践ですね。 なおNDと言うのは検出限界未満を指し、計れないほど微量で有ったと言う意味ですが、これは『ゼロ』では有りません。こういう類の表現の場合には、濃度幾ら未満の廃液を何トン放出したと言う詳細データが必要かとも思います。 ここで問題の様に見えるのはトリチウムです、他のものは検出限界未満に管理される事が多いのに、この核種だけは毎年排出されます。 このトリチウムは炉内で重水素が中性子照射を受けて生ずるもので、核施設では必ず発生します。 発生すると直ぐに同位体置換を起こしHTOの形となるので、除去は困難を極めます、何故なら水そのものだからです。従って一次系廃液由来ならば蒸留水であってもトリチウムは存在することになります。 ではトリチウムを放出して問題ないのか?ですが、問題は有りません。 トリチウムは半減期約12年、18KeVの純ベータ放射体で体外に有れば被ばくの恐れは全く有りません。体内に取り込んでも当然蓄積される様なものでは無い。従って経口摂取の場合の被ばく線量寄与率は極めて低く、自然界に存在するカリウム-40と比較すると約1/150の寄与率と計算されています。 現状の一般的な環境トリチウム濃度は約1ベクレル/リットルです、東電福島第一の廃液中トリチウムがこの濃度になるのには10億トンの水での希釈が必要です。だが淀川みたいな川の年間流量が85億トンであることを考えれば、遙かに大量の水がある海洋への放出は問題となる濃度にはなり得ない事が判る。 実際トリチウムは大気圏水爆実験多発の時期、降雨水中濃度で100ベクレル/リットルと言うレベルだったのが事実である。 この辺反論文は曖昧にしているが、事実は事実として公平に評価すべきでしょう。 温排水に関しては原文は余りにも幼稚すぎる、ほぼこの部分は反論文通りです。 ましてや二次系統であるPWRには温排水に云々と言うことは当てはまりません。 排水口での放射線云々は原文は100%間違えていますし、反論文も適当ではありません。 わかめ売りのお婆さんの話が出てきます、風評被害の話ですが、デタラメだらけのこの原文が拡散すればこの風評被害がかえって広がりませんか?よく考えてみてください。 現在皆さんが撒き散らかす風評被害で新潟の損失は計り知れません、そもそも原発が存在するからだと言われれば何も論議する事など出来ません。その様な考えを持つ方はこの先読んでも無駄でしょう。 この章の元文章は「悪意有る捏造」と指摘しても構わないでしょう。 第八章 内部被曝が一番怖い  の検証 原発の中は全部放射性物質に変わる・・・・・部分は有ります。但し中性子が漏洩する可能性のある原子炉圧力容器本体及び内部構造物並びに原子炉を取り囲んでいる内部生体遮蔽コンクリート隔壁までです。 原子核変換が起きうるのは中性子捕獲反応が主体で、ガンマ線によるものの寄与は非常に低い。 この辺平井氏には十分な理解ができていないと思われます。 内部被ばくは別項にも書きますが、確かに一番怖いモノです。しかし十分な安全対策を取りさえすれば発生確率を非常に小さく出来ます(ただし運転を停止した新型転換炉ふげんでは、注意してもトリチウム取り込みは防げません、従って危険性の高い作業での取り込みは起こります)。 放射性物質に汚染されたほこりがダストとなり空気中を飛散するのは当然です、従って汚染区域として管理される場所でも汚染度合いを極力低く抑えるよう努力しています。 ましてやそう言う場所では常時モニタリングが行われ、異常が有れば待避させるかマスク着用が指示されます。従って一般管理区域を通常装備で歩いている人への影響はまず有りません。 なお、平井氏が内部被ばくを100回以上もして・・・と言う記述はまずウソでしょう。内部被ばくをした作業員は厳重にその後(体内残存放射性物質量の)監視をされます。 即ち元文章に書かれているように、体内部から放射線が出るわけですから、管理区域から退出する時に必ず計らなければいけない体表面汚染モニタにまで影響を与えますので、毎度毎度大騒ぎになりますし、再度内部被ばくが生じても判りにくいからです。 実際私が現場パトロールから戻る際、ある作業員がこのモニタに何度も引っかかって体表面除洗を繰り返していました。念のため私が調べたら顔面に汚染があり、除洗キット使っても落ちません。 担当放射線管理員を呼びだして後を任せましたが、結果は内部被ばくでした。 装備が暑苦しいからと言って防護マスクを勝手に外して作業したとのこと。 結局この作業員は以後外部ヤード作業に配置転換され、以後管理区域入域禁止処分となりました。 また放射線管理手帳には内部被ばくの詳細と評価線量が記述されておりますから、そんな記載が満載されている作業員の登録申請すら電力会社から断られます。 従って体表面モニタに引っかかった→内部被ばくしたかも→きっとそうに違いない、これが平井氏の脳内にイメージされた正体と推定されます。 ましてや平井氏が罹患したガンが原発由来のものであるか否かは全く未証明であり、あくまでも本人の思い込みが綴られているだけです。気の毒だとは思いますが、それとこれとは話が別です。 現代の死因の3割以上がガンである事は広く知られています、では放射線作業従事者はそれよりも高い死亡率なのか?、結論はまだまだ先になろうとは思いますが原子力産業からの離職者も対象にこの辺の調査がなされており、現状では有意差は認められておりません。実際私の処にも追跡調査票が送られてきましたから。 また台湾で発生した事例ですが、マンション構造物に放射性物質が混入しており、大規模な公衆被ばく事故が発生しました。 しかしながらその調査で明らかになったのは・・・・・被ばく事故でガンは増加どころか逆に非常に低い発生率だったのです。 http://www.iips.co.jp/rah/n&i/n&i_taiw.htm この章では以前に指摘したように、放射線等に関する基礎知識が余りにも幼稚です。 第九章 普通の職場環境とは全く違う  の検証 放射線と放射性物質の差異を全く理解されていない記述がこの章以降も続きます、放射性物質の取り込みなら蓄積は有り得ますが、それも核種によりけりで大概の核種は体外へ排出されます。 放射線被ばくは低線量なら蓄積などしないでしょうし、蓄積すると言う学説もほぼ皆無です。 一日の被ばく線量は通常1ミリシーベルト/日で管理されており、この管理値は地元労基署に届け出られています。従って超過すると大きな問題となりますので、通常携帯するアラームメータの設定値は管理値より相当低いものしか許可されません。一般作業用なら最大でも0.3ミリシーベルト設定です。 分刻みでやる仕事は極まれですが、元文章例の作業の場合マーキングによりボルトに番号が明示され、作業員にはどれを締めるのか最終的に指示が為されます。ボルト締め付け作業は単に締めれば良い訳では無くキチンとした管理がなされています、即ち締め付けトルクやギャップ隙間ゲージの管理などで、基本的には電力会社担当員の確認を受けますから、素人が適当に締め付けてそれでOkなんてのは有り得ません。 この部分、装備に関する記述が無いので恐らくタービン建家の給水加熱器エリアでの作業でしょう。 この場所、原子炉運転中は窒素の放射性同位体の影響で非常に高線量率になりますが、運転停止となると普通の通路と同じ状態にまで外部放射線量は落ちます。 なおこの話と同類の事は見聞きしておりますので恐らく事実でしょう、珍しく事実と認定します。 但し決定的に放射線等の知識がデタラメなのは相変わらずですが。 以下次回へ 第十章 「絶対安全」だと五時間の洗脳教育  の検証 ここでは当該章の検証と、当該文章では触れられていない原発で働く前の手続き、及び個人放射線管理について説明します。 5時間の『洗脳教育』との指摘ですが、これは労働安全衛生法と電離則により求められる教育であり、その他有害業務として労働安全衛生法で定められたものは全て似たような教育を受けねばなりません。 ------------ 労働安全衛生法(安全衛生教育) 第59条事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。 2前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する。 3事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。 ---------- 上の59条の第3項規定が電離則によって細目が決められている訳です。 何の為の教育か?「有害と認められる業務だからこその教育」ですから、安全だと洗脳するのでは全く逆ですね。被ばくするよりも被ばくしない方が良いに決まっていますから、この場合如何に無駄な被ばくをするな!に力点が置かれる教育となりますし、マスクの着用方法など自己防御について教育するわけです。 さてここで重大な疑問点があります、有る意味当該文章の正当性を試される部分です。 それは『私自身が二〇年近く、現場の責任者として、働く人にオウムの麻原以上のマインド・コントロール、「洗脳教育」をやって来ました。何人殺したかわかりません。・・・』と言う部分です。 前後の文脈からして上記の教育を自ら行ったと言うように読みとれます。 しかし原発での上記教育は平井氏には行えません、この教育を担当する者は放射線管理員と呼ばれる職制の人達だけです。放射線と放射能の区別が出来ていない人が放射線管理員などなれる筈も無く、ましてや教育係などとんでも無い話です。実際教育を行う人は放射線管理業務歴及び知識を問われ、その経歴は電力会社に届け出られます。 そしてこれを更に裏付ける内容が第8章内部被ばくが一番怖い、の一番最後に書かれた「100回も内部被ばくを・・・」と言う記述です。 内部被ばくをするような放射線管理員は失格です、ましてや複数回なんてのは永久追放ものです。 従って第八章とこの章の内容はお互いに相容れない内容を含むのです。 即ちどちらかが間違っているか?或いは両方間違いか?、私の見解は当然後者です。 なお原文では一切触れられていませんが、原発で働くために必要な手続き及び書面の流れを作業員Aさんを例に解説してみましょう。なお中央登録センター及び放射線管理手帳については下記をご覧下さい。 http://www.rea.or.jp/chutou/chutouimg.htm まず仮にAさんとしましょう、このAさんが○×工業と言う個人会社に雇われたとします。 このAさんの放射線管理手帳を発給してもらわねばなりません。 ○×工業自体が丸抱えで雇われているのは※※建設ですが普通このレベルの会社で放射線管理手帳発行は出来ません。 全国の主要な会社が手帳発効機関として登録されているのでその手帳発効機関に申請します。 この際に身元確認書類の添付が義務づけられています。同一人物が二つの手帳を所持する事が無いよう、データは全て中央登録センターに引き渡され、チェックを受けます。 Aさんは初めて放射線作業従事者となるため前歴は有りませんでしたので、申請が通って発行された手帳には「放射線作業従事履歴無し」と記載されてきます。前歴が有ればその旨が通知され、過去に発行した手帳を提出するように申し渡されます、紛失していた場合には再発行手続きになります。 手帳が発行されましたら電離則に基づいた健康診断の受診です。 此処まで手続きが終わったらいよいよ入域申請です、※※建設が仕事を貰っているのは△◆プラント建設です、ココに※※建設所属として登録申請を行います、提出書類は上記の放射線管理手帳と健康診断書の写しです、又身分証明書類の提出も必要でしょう。他に実際の作業員として必要な労働関係書類も有ります。 △◆プラント建設が書類を受け取ると電離則に定められた教育を実施します。内容は 一  核燃料物質若しくは使用済燃料又はこれらによつて汚染された物に関する知識  三十分 二  原子炉施設における作業の方法に関する知識                 一時間三十分 三  原子炉施設に係る設備の構造及び取扱いの方法に関する知識          一時間三十分 四  電離放射線の生体に与える影響                       三十分 五  関係法令                                 一時間 六  原子炉施設における作業の方法及び同施設に係る設備の取扱い         二時間 ※注 原発での教育に関しては、別途各電力共通のテキストが出来たらしいのですが、私の退職後の事でもありますので詳細は判りません。上の時間を合計すると7時間になりますが、最後6番目の項目は実技講習と言う事で、最初の現場入域時に認定された技能者が引率して行っている筈です。 従って机上での講習は合計5時間と法令で決まっているため、聞く方に取っては退屈な授業が実施されます。 ですが、実際のところ「電離放射線の生体に与える影響・関係法令」なんてまともな内容を教育すると大変難しい内容になってしまいます、情けない事に国家資格を持ってる私ですら難しすぎて判らない事だらけです。従って概略を教わるだけですし、洗脳教育と揶揄されるのも無理もないかも知れません。但し上記には有りませんが非常時の措置等も教える事が重要です。 基本的に構内で異常事態が起こったら?、上司に報告するのは当然ですが影響が広範囲に拡がる恐れの強いとき(火災等)は事態を中央制御室(中繰)の運転管理員へ報告しないといけません。 これは絶対に守らなくてはいけないし知っておかなければならない不文律です。 一応教育内容を理解したかテストを受けます、合格点に達しないと再教育を受けねばなりません。 この点担当する放射線管理員は頑固なのが多いでしょうか?。 但し、教育する側等と同等のレベルに有ると認定される人たちには免除規定がありますので、毎回毎回同じ話の繰り返しを聞かなくても済むのは享受できる者には有り難いですが、一般作業員にはなかなか適用はされないみたいです。なお労働安全関連の安全教育も為されます。 本当ならばこの教育は会社が雇用し放射線従事者として登録しようとした際にその会社自身でも実施すべきものですが、残念なことにそんな事が出来る会社は限られています、従って元請け会社に丸投げ状態が殆どです。 申請書類に不備が無ければホールボディカウンタ受診の指示がなされます。 ホールボディカウンタとは作業員全身を放射線測定器で測定するモノで、予め個人個人違うバックグラウンドの放射線を測定します。人間の体内にはカリウム-40と言う物質が存在し今もあなたの体内で自ら放射線を放出しています、そしてこの量は個人個人違うからです。 このホールボディカウンタは入域申請時及び一定期間毎並びに退域申請時に受診しなければいけません。(万が一にも内部被ばくの恐れが有った場合は即座にホールボディカウンタでの測定が行われ、過去の測定値との差異を計り、有意測定値が有れば内部被ばくの評価が行われます。実際にこの状態まで進むと当該事業所はてんやわんやの大騒ぎになります。何せ色々なところに報告義務がありますし、内部被ばくに遭った作業員の方を上記測定で有意測定値以下になるまで当該事業所で管理しなくてはいけませんから) 上記と共に写真撮影やらが同時に行われ、やっと入域用のIDカード等が電力会社から発給されます。 カードが発行されたら放射線管理員から同時にフィルムバッチが発行され、これで入域が可能となります。なお発電所のシステムにより違いますが従事作業件名毎に作業員登録が必要な場合があり、登録漏れすると中に入れません。 原発を語る際に、【都市伝説】とも言えるのが、曰く日雇いで原発に行き怖くなって帰ってきたってお話です。 上で述べた申請を最初から全部クリアするには最低でも1週間近くの日数と、結構なお金が掛かります。 果たして日雇い仕事で出来るものでしょうか? 【放射線管理の実際・個人被ばく線量管理】 個人の被ばく線量に関しては電離則第四条に規定があり、その内容は以下の通りです。 ----------- 第四条  事業者は、管理区域内において放射線業務に従事する労働者(以下「放射線業務従事者」という。)の受ける実効線量が五年間につき百ミリシーベルトを超えず、かつ、一年間につき五十ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。 2  事業者は、前項の規定にかかわらず、女性の放射線業務従事者(妊娠する可能性がないと診断されたもの及び第六条に規定するものを除く。)の受ける実効線量については、三月間につき五ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。 第五条  事業者は、放射線業務従事者の受ける等価線量が、眼の水晶体に受けるものについては一年間につき百五十ミリシーベルト、皮膚に受けるものについては一年間につき五百ミリシーベルトを、それぞれ超えないようにしなければならない。 第六条  事業者は、妊娠と診断された女性の放射線業務従事者の受ける線量が、妊娠と診断されたときから出産までの間(以下「妊娠中」という。)につき次の各号に掲げる線量の区分に応じて、それぞれ当該各号に定める値を超えないようにしなければならない。 一  内部被ばくによる実効線量については、一ミリシーベルト 二  腹部表面に受ける等価線量については、二ミリシーベルト ----------- しかし各元請け会社や電力会社は更に厳しい制限を付けています。 1. 1日の被ばく上限は1ミリシーベルト/日。但しやむを得ない業務の場合には許可制で3ミリシーベルト/日。この値は管理目標値とされるもので、超えたから法令違反というものでは有りません、しかし管轄労基署と協定を結んでおり、超えたら報告義務が有ります、健康診断結果も報告対象です。※注 2. 連続する3ヶ月間の被ばく線量合計が10ミリシーベルトを超えないこと。  (この制限ならば絶対に法による年間50ミリシーベルトを逸脱することは無い為) 3. 連続する5年間の線量管理は会社によって違うが、上記2.に相当する方式を採っている筈です。   若しくは年間基準を20ミリシーベルトに制限しているのかも知れません。 では実際の線量管理はどうなって居るのか、一日の制限値1ミリシーベルトは大抵の場合熱ルミネセンス線量計(TLD)にて測定されます。IDカードと共に入域時と退域時に測定器に読み込ませ、日常の管理を行います。日常管理目標値を超えない為にアラームメーターが併用されます、この測定器は設定値に達すると警報が鳴り、作業員の現場からの退出を促します。但しこの測定器はあくまでも補助であり日常管理のこの測定器の値が用いられる事は有りません(但し電力会社によっては、自動読み取り装置と連動させるタイプを採用しTLDを使わない場合もあります)。又電力会社の方針により着用義務である場合もありますし、特定作業だけ着用と言うケースも有ります。確かにこれが鳴ると心臓には良くありません、びっくりしますし慣れるとそろそろ鳴るなと予測も出来ます。 月間の被ばく線量管理にはフィルムバッチF・Bが用いられます。このフィルムバッチの測定値が評価線量として通常用いられます。 連続3ヶ月管理10ミリシーベルトを遵守するために被ばく線量が多い作業員は色々な制限を受けます。 まぁ放射線管理側の自己保身策なんですが、場合によっては仕事の配置転換まで要求されるので作業員は大変です。従ってベテランになればなるほど仕事の重要性と被ばく線量のバランスを考えないといざというときに働けなく可能性が高まります。 よってベテランのプロは仕事の勘所のみ自身でやり、他の作業は部下に任せ管理するだけと言うことが多々あります。この現象を捕まえて素人が工事してると言われれば、そうかも知れないですね。 まぁ個人の被ばく線量が低いに越したことは有りませんが、俺がやらなきゃって熟練工ほど被ばくしやすいのも当然で、そう言う熟練工には厳しくなってきてるのも確かです。 上の被ばく管理計画に対して逸脱するとどうなるかの実例が一つ公開文書にありました。 http://www.kepco.co.jp/pressre/2006/0518-1j.html ご参照下さい。 さて、では一体上の被ばく制限値はどのような意味を持つのでしょうか。 一般公衆が通常自然界から受ける天然由来の被ばく線量は地域により異なりますが凡そ年間1ミリシーベルト内外と言われています、従って人工放射線による公衆への影響はこれと同等レベルの増加は許容できるだろうと言う考え方で同じく1ミリシーベルト/年に制限されています。 よって原子力施設等では、漏洩する恐れのある放射線及び放射性物質による影響は上記制限値より低くなる様に設計・管理されているのは勿論です。 では放射線による障害の実態研究はどうなっているのか? 当然の如く人体実験など出来ようはずも無く、過去の事例から影響度を推定しているのが実情です。 そして一番大きな研究対象が広島・長崎の原爆での放射線被ばくと言うものです。 その他原子力業界は隠したがりますが世界各地で起きた再処理工場での反応度事故での障害事例(但し殆どの事例で死亡事故となっている)など。 それによればおよそ4シーベルトの一時被ばく線量で30日以内に50%の方が亡くなる。 一時被ばく線量が7シーベルトに達するとほぼ全員が助からない。 これらは放射線を受けた細胞が損傷し再生能力を喪失してしまい、結果人を死に追いやるのです。 では、管理されている被ばくも蓄積されて上の線量に達したら?ですが、5年で100ミリ制限が有りますから、4000ミリシーベルトに達するには200年掛かる訳で絶対に達しません。 また上記死亡リスクはあくまで一時被ばくによるもので、長期間分散被ばくでは細胞の再生能力は奪われておりませんので問題は非常に少ない筈です。 従って現状の放射線防護の観点から見ると、DNAの損傷による異常細胞増殖という後発的影響や遺伝的影響が最も心配される事で、残念ながら現在でもこの辺の解明は全くなされていないのが実情です。 とは言え、判っていないものは使うなとすれば、現状でも他の分野でも同じ様な事例は沢山あり、その辺との整合性を取るなら人間は相当の不便を甘受すべきだろうと思います。 実際特殊な脳腫瘍などの治療には原子炉由来の中性子線照射が有効である場面があります、しかしこの様な照射が行える原子炉は日本に数機しかなく、殆どは原発のみで日本の原子力環境が歪な状態にあるのは確かです。 後ほどこの研究炉については再度別章でふれてみたいと思います。 以下次回へ 第十一章  だれが助けるのか     の検証 管理区域内での人身事故ですが、起こすまいと現場では日々努力していますが、決して根絶できません。 大概は作業員の不注意によるものですが、初期の原発では作業区域が狭隘であったりと、現場環境に由来するものも少なくありません。 元文章では汚染除去をせずに搬出した事を重大事としていますが、人命が掛かった場合には仕方ない筈です。 実際私が遭遇したのは転落事故でした、作業員はやはり汚染区域内作業中でしたが、電力社員が作業服を脱がせ(ハサミで切り裂く訳です)、汚染チェックしているのを見ていました。 99年に起きたJCO臨界事故では、被災者を搬送した救急隊員に放射線被ばくがありましたが、緊急を要する場合には仕方ないことでしょう。緊急時は人命優先がどんな場合にも成り立ちます。 上記問題をして一般公衆問題を論じても無意味です。 第十二章  びっくりした美浜原発細管破断事故!  の検証 この章は色々問題が多い章で、どの様に説明するかで印象が大いに異なる筈です、以下どんな事故だったか解説したいと思います。 福島第二原発3号機の事故は、再循環ポンプの内部インペラーが破損したものですが、再循環ポンプが作動しないと、炉心流量が減り→炉水温度上昇→ ボイド発生量増大→炉心中性子減速能減少→中性子束密度減少と繋がり、結局原子炉出力は低下します。従ってこの事故は破片が炉心で燃料集合体を傷つけない限り重大問題には発展し得ません。 ところが再循環ポンプ吐出ラインは原子炉の一番外側を下向きに流れ込みます、炉底部から上向き対流に乗りますが、大きな金属片なら自重が邪魔をするのは明白ですね。細かい破片なら炉心部に到達するでしょうが、BWRの燃料集合体はチャンネルボックスと言うケースで包まれており、燃料棒はむき出しでは無い。従って被害はここで食い止められる。 但しこの事故は国際基準ではレベル2ですので、十分に大きな事故であるのは異論有りません。 この事故は実はもっと重要な側面を持っています。 事故は1989年1月1日に最初の異常振動が計測され、その後監視しながら1月6日まで運転が継続されました。1月7日原子炉は停止され定期検査に入ったのですが、この定期検査は元々予定されていたもので、その項目の中に当該再循環ポンプの水中軸受け交換が予定として入っておりました。 即ち当該部品は過去に数度のトラブルを経験しており、最初の振動大警報から見てもこの事故のトラブルは十分に予測出来得た筈なのです。しかしながらもう数日で止める予定と言うか直後に定期検査が予定されており、そこまで運転を引っ張った方が問題としては大きい筈です。 機械類の故障や事故は起こる方が当たり前、エンジニアは極力その可能性を低減努力すべきであり、人間の判断の方が重要です。 従ってこの事故を取り上げるなら、空想のような仮定をでっち上げるより、私が取り上げた問題を重要視すべきです。先に有った運転中のボルト締めより此方の方が余程悪質ですから。 美浜事故の記述は・・・・余りにもインチキなので詳細をATOMICAより確認下さい。 http://www.atomin.gr.jp/atomica/02/02070204_1.html 原文中であと0.7秒でチェリノブイリの二の舞、との表現がなされていますが、これは余りにも不適切です。 (前にも書きましたが平井氏はPWRで仕事をした経験は無いか、有っても短期応援程度でしょう。) 類似事故ならスリーマイル島事故の方が近いでしょうが、此方とも大きな差異が有ります。 即ち美浜事故は一次系よりの原子炉水破断漏水事故であり、安全弁固着による炉水漏洩のTMIと様子は同じ、安全系が自動起動も同じ、但しTMIでは誤作動と勘違いして折角起動した安全系を手動停止した事が重大事故に繋がった訳です、美浜は安全系を稼働させつつ当該漏洩箇所を系統隔離しました。 なおこの事故の発端となったのが不正工作です、原文でもそれを指摘していますが、確かに現場で寸法が合わない事例は幾度と無く出ます。この辺現場で内緒作業をすればどんなことになるか?の先例ですが、結構後をたたない事例でもあります。つい数年前も日立で請け負った再処理工場での燃料貯蔵プールでこの手の不正が発覚しました。これについては原文が言う現場では設計の意図通りには行かないことがある・・・・・とおりだと思います。 但し20年見つからなかった・・・・のは、当該場所が2次側であることに起因します。こちらも美浜で起こった復水配管の破断事故でも同様です。 PWRの二次側は放射性物質を含まない「火力と同等」と言う考え方が有り、どうしても安全設計が一次系ほどには重視されず、検査要求度も大きく劣ります。 復水配管破断事故は当初全く検査対象ですら無かったのです。 チェリノブイリ事故は簡単に説明すると、低出力運転では非常に不安定な原子炉形式であるにも係わらず、規則に違反して低出力での実験を行っていた。 しかし固有の負の反応度の影響で出力がドンドン低下するために、一見奇妙に見えるが【低出力を維持するために制御棒の殆どを原子炉から引き抜いた】状態で運転が継続された。 ここで正の反応度が加わった為に、一気に炉心で反応度の急加速が引き起こされ、炉心溶融へと繋がり冷却材である水と核燃料との接触で水蒸気爆発を引き起こした(核爆発ではありません)。 この爆発で原子炉及び建家が破壊され、炉心剥き出しのまま放射性物質が環境へ放出された訳です。 (日本の原発と大きく異なるのは、格納容器が無かった事、有れば炉心が壊れてもガス成分の放出は防げずとも粒状成分の大部分を漏洩から守れたはずです) 日本の原発で上記のような爆発が生じたら・・・・・格納容器で受け止めます。 なおここで引用している文章では破断した細管の径は2センチとなっていますが、この元文章バージョン違いではなんと2ミリとなっているものすら存在します。(検証文引用がそうなっていますね) この章は完璧に原発不安を煽るために事故の内容すら捏造し、意図的に事実を語っていません。 但し現場施工が任意で変造されるケースが有るには同意します。 第十三章  もんじゅの大事故 「事象じゃない事故だ」原子力行政への痛烈な批判であり、一般の方には受けが良いとは思います。 但し原子力関係ではこの「事故」と言う言葉について、立場の違いで雲泥の差が有るのです。 実験室レベルでのRI研究者にとって見れば、実験室で非密封RI入りのビーカーを転倒させ、RIを試験エリアで拡散させたら・・・・「立派な事故」です。 処が原発となると、一般公衆に影響を与える放射性物質の拡散が伴う案件が「事故」です。 これは前にも書きましたが、例え管理区域外で転落事故が有ってもメディアでの報道は「原発で事故」。 有る意味マスコミがこんなものに誘導したと言えない事も無いでしょう。 なお誤差の件ですが、私には判らない事例ですので検証は出来ません。 但し配管工事ではこの様な現場誤差を吸収する箇所が必ず設計に盛り込まれています。 ルーズと呼ばれるモノですが、平井氏が知らないはずが無いと思います。 なおこの事故は完全に二次側であるという甘えが招いた事故です。二次側だろうが液体ナトリウムの危険性をまともに考えれば、通常原発の炉水漏洩以上に注意を払うべきであり、当該温度計は一次側で使用したものを利用すべきだったでしょう。 以下 次回へ 第十四章 日本のプルトニウムがフランスの核兵器に?  の検証 ここは露骨なこじつけですね、原子爆弾に使われるプルトニウムは兵器級プルトニウムと呼ばれるモノであり、プルトニウム-239の比率が9割を超えるモノです。一方軽水炉から取り出されるプルトニウムは原子炉級プルトニウムと呼ばれプルトニウム-239の比率が6〜7割程度しか有りません。 プルトニウムはウラン238に中性子が捕獲された結果出来ます、このプルトニウム239は核分裂性ですが一定比率で中性子を捕獲しても核分裂を起こさず、比較的安定的に存在するケースがあります。 この様にして出来るのがプルトニウム240であり、更に中性子を捕獲して・・・との反応が続きます。 この様な反応は一定確率で起きるために、結局原子炉内での中性子照射時間が長ければ長いほど出来上がるプルトニウム239の比率が下がるのです。よって兵器級プルトニウムは、転換比の高い炉形で短時間の臨界をもって製造される。 詳細を述べると長くなりますが、原子炉級プルトニウムは次の3点で原爆の材料とするには不向きなのです。 1.核分裂しないプルトニウムを2割前後含むために、臨界必要量は多くなる(爆弾が大きくなる)。 2.自発核分裂するプルトニウム量が多くなるので、爆縮過程で最適条件を取りにくい(威力低下)。 3.半減期の短いものが多くなるので、発熱・γ線に対する考慮が不可欠(爆弾がさらに大きくなる)。 この辺、プルトニウム爆弾が失敗する例として昨年の北朝鮮による核実験を我々は知っています。 核保有国が実験を繰り返すのは、この性能試験をやらないと核の担保が出来ないからです。 現在の原爆はミサイル搭載が前提条件です、処がサイズが大きくなれば搭載可能ミサイルも大型化することは自明であり、圧倒的に兵器としての可用性は低下します。このようなデメリットを知りつつフランスが敢えて開発するでしょうか?答えは明らかだと思います。 原文中ではこの点全部『・・・に違いありません』で検証など全くされていません。 実際の処フランスの原爆開発は、1960年に最初の核実験が行われ過去に200回を超えています。 そんな国がわざわざ可用性の低い、かつ失敗する率が無視し得ない実験を世界の非難を浴びてまで強行するでしょうか?。ましてや自国が世界一の原子力発電大国であるにも係わらず、何故日本の原発で使われた使用済み燃料を材料にするのか?・・・・・・理屈に合いませんね。 なお原発で発生する使用済み燃料中のプルトニウムは出来ただけなのか?、ですが、実は発生したプルトニウムの大部分はウランと一緒に原子炉内で核分裂しているのです。実際運転中の発生エネルギー寄与率ではプルトニウムが約3割を占めているのです。MOX燃料でなくても既に原発ではプルトニウムは利用されています、念のため。又廃炉になったふげんでは一足先にMOX燃料が使われています。 第十五章 日本には途中でやめる勇気がない   の検証 原子力に関する周辺事情はここ数年で変化しました、元文章が指摘するアメリカの撤退は逆に再参入に変化しつつあります。 確かに原子力の負の面から、多数の国の撤退が実際起こりました。とは言え、撤退した国は代替案がしっかり議論された上での事です。日本では撤退を叫ぶ方々から具体的な代替案が出た例しがありません。この辺はしっかり議論すべき事柄です。このテキスト書いている私も、原発に代わりうる安定供給可能な電源が未来にわたってしっかり確保出来るなら脱原発を促進すべきと思ってます。 なお、アメリカの再参入に当たって、米国本家メーカーと日本メーカーの合弁が盛んです、20年以上続いた原子力冬の時代だったアメリカに取って、例え基本設計を成し遂げた本家メーカーですら日本の技術力を導入せざるを得ないのが現在の原子力界の実像なのです。 反論文ではこの辺原発を止めるための前提条件が整っていないとしていますが、確かにその通りであり次代のエネルギー源の開発は重要です。しかしながら他の発電研究に対する資金は圧倒的に足りませんから、何なら原子力発電に一定の賦課金を課しその資金を投入すれば良い。但し結果的には国民全部にそのコストが跳ね返るのは甘受せざるを得ないでしょうし、国際競争力の低い業種は衰退する事が避けられません。 第十六章 廃炉も解体も出来ない原発 第十七章 閉鎖」して、監視・管理     の検証 この二章は結果的に同じ事ですので纏めて検証します。 この廃炉が出来ないと言うのは明白なウソで、既に日本ではJPDRと言う研究炉が完全解体されました。日本原電の東海発電所が現在解体中で、もう間もなく原子炉本体等に着手されます。 http://www.atomin.gr.jp/atomica/05/05020410_1.html また原発の耐用年数10年と言うのも根拠無しで、当初からほぼ40年を想定しています。 原発の定期点検項目を調べれば判りますが、原発寿命中に1回点検すれば良いと言う具合に、重要度レベルの低い機器の要求される点検頻度は低い。そしてその期間が40年に設定されております。 即ち寿命が10年しかないのなら、40年とされた点検間隔は全く意味もない事になります。 よって当初の原発稼働寿命が40年程度と見積もられていた間接的な証拠でしょう。 更に、古い原発はその都度に部品や機器そのものをリプレースしており、当初のままなのは原子炉圧力容器や格納容器などだけでしょう。 反論文にも書かれていますが、BWR原子炉シュラウドは原子炉内部構造物で、将に心臓部に存在する機器です。日本でもこれの交換作業が実施されており、化学除洗の手法は一応確立しております。 又、配管等で常時高温にさらされていた部分ですが、私は切り出した配管内部の試験を行った事があるのですが、クラッド成分が焼き付いており表面に膜を作った状態です。 鉄製のフライパン、最初にプロがやるような処理をすれば焦げ付きもせず水で洗っても錆びません。 それと同じ様な状況になっていると考えて良いと思います。 実際海外でも沢山の原子炉が廃炉処分中です。 下をご確認下さい、最初に解体された時期はなんと日本に原子力発電所が出来た時期に匹敵します。 http://www.atomin.gr.jp/atomica/05/05020301_1.html なお以前の章で研究炉についてちょっと触れましたが、日本の研究用原子炉は実に危機的な状況にあります。元文章中に触れられている武蔵工業大学の原子炉は全く同型のものが立教大学にも有り、それぞれ大いに日本での各種研究に役立って来ました。実際私も立教炉での実験に携わった事が有ります。 ところが私大で管理するには確かに予算的にも厳しく、これらの炉が故障した時点で確かに修理費用は捻出できず(資金問題が解決しても周辺住民による反対の影響もあった)、結局廃炉となった。 但しそのまま放置など出来ようも無く、現在解体撤去の方法などを研究中です。 これらの研究炉は何れも老朽化してきており、上記名前を挙げた100KW級原子炉の不在は色々な研究に対して多くの制約をもたらしています。 難しい話ですが、放射化学分析と言う分野ではこの手の原子炉が不可欠であり、決して大は小を兼ねるいうものでは無いのです。 京大炉も燃料の問題が残り、この辺日本の研究レベルが落ちかねないのは頭の痛いところでしょう。 第十八章  どうしようもない放射性廃棄物   の検証 ここではドラム缶を海洋投棄したと書かれています、確かに過去に海洋投棄した事は有りますが、その物品は原発で出たモノでは有りません。一般研究施設や医療施設での放射性同位元素の利用で出たRI廃棄物としての物件なのです。当該事業を行っていた日本アイソトープ協会の事業所が東海村にあるので、勘違いされたものと思われます。日本の原発由来ドラム缶が海洋投棄された事例は存在しません。 この辺の事情は反論文を書かれた方もご存じなかったと思われます。 日本の原子力発電黎明期頃の運転開始日は下記の通り 日本原電東海原子力発電所     1966年7月25日 日本原電敦賀原子力発電所1号機  1970年3月14日 関西電力美浜原子力発電所1号機  1970年11月28日 東電福島第一原子力発電所1号機  1971年3月26日 即ち元文章で、69年まではどこの原発でも近くの海へ・・・・云々というのは、出来ても居ない原発に対しては使えませんから、対象となるのは原電東海のみですね。 これは上で触れたように、事業所が近接している為の錯誤と考えて良いでしょう。 なお、低レベル放射性廃棄物の埋設処分では「300年間も監視」などしません。 当初の約60年間監視はしますが、その後は「放置」です、それでも大丈夫なように基本設定されています。 え?放置なのと思われますが、日本原燃のホームページでご確認下さい、第一段階及び第二段階両者併せて約60年間は周辺監視区域などが設定されていますが、第三段階ではその設定も無くなります。 掘削を伴う事業は禁止されますが、それ以外では埋設地の用途制限が解けるのです。 但し環境モニタリングは続けられますが、監視と言う項目は全く見あたらない事が判ります。 高レベル放射性廃棄物の問題は元文章の指摘や反論文でも同じで、現状処分地すら決まっておりませんし、申し入れを行った東洋町町長が選挙で敗れるなど非常に先行きは不透明です。 高レベル放射性廃棄物の厄介な点は偏に内蔵する核種の半減期が長いと言う点に尽きます。 これを短半減期の核種に変換できれば処理は随分と楽になるのですが、その道のりは未だ緒についたばかりです。一応ヨウ素129の研究でガンマ線利用の消滅研究に一定の成果が出たところですが、まだまだ実用化には遠いのが実状でしょう。何れにせよ今後の研究が待たれるところです。 そう言った意味合いでこの問題は原子力の最大のアキレス腱と言って差し支えないでしょう。 以下次回へ 第十九章 住民の被曝と恐ろしい差別 第二十章 私、子供生んでも大丈夫ですか。たとえ電気がなくなってもいいから、私は原発はいやだ。 第二十一章 原発がある限り、安心できない   の検証 有る意味この文章の白眉とも言う部分に相当します、が、ここは検証不能です。あくまでも平井氏の個人的体験ですから。 但し女の子の発言ですが、このセミナーが行われた時の主催者は・・・・教職員組合です。 原発は危ない、その周辺住民も既に原発の影響を受けている、この様な認識を中学生が普通にするでしょうか?、その様な知識を誰が授けたのでしょうか?。 そんな疑問が私には私には拭えません、一方的な物事の一面しか教わらない事がどんな結末を迎えるのかは、戦前の軍国教育や先般起こった中国における反日運動を見れば明らかだと思います。 但し最終章で述べられている一般論には部分的ながらも賛同致します。 とは言え、現在の原油高にも係わらず電気料金の値上げ幅が小さいのは、原子力等の石油火力以外の電力が有るお陰です。 現代社会は全く違う要因で簡単に混乱します、エネルギー資源をほぼ海外に頼らざるを得ない日本を考えた場合に、エネルギー資源は多角的にそして長期的視野に立って選択せざるを得ません。 現状安定的供給見通しが立っており、かつベース電源として成り立っているのが原子力です。 しかし、取って代わりうるより安全な電源が有ればその座を明け渡すのが当然でしょう。 それが何時なのか?、そしてそれを阻害するものが有るのか、有ればそれは何なのか? そう言った観点で厳しく原子力を問いただすのが我々の責務だと思っております。 原子力は決して安全では有りません、判断ミスなどで容易に破滅を迎える危険性を孕んでいます。 しかし現場の技術者達はその可能性を可能な限り低減しようと努力しています。 その努力を一笑に付すのは簡単です、無益だと蔑むのも簡単です、でも私はそんな後輩達の努力だけは評価してやりたい、但し賛美だけに終わってはならぬとも自戒しております。 出来うるならば、今後正しい情報が隠蔽無く原子力界から提供され、その是非を理性的に討論出来る社会になれば、より良い未来への設計図が描けるのではないかとも思います。 色々と怪文書と私が断定する「原発がどんなものか知ってほしい」と言う文章に対する、私なりの検証を今回で終了します。元文章の評価は読まれた方に一任します、私の意思など無縁の事ですから。 まぁこんな拙く、かつ長すぎる文章を完読された方は皆無かと思いますが、お付き合い有り難うございました。 終了