キャラクター説明 ビルミート:超肥満体の鯨 リタ :妻 詳しくは、脹カム様の〜大富豪・リーラ〜の生存ルート参照 =港町の大食い鯨= 「お、こんな時間か。すまねぇが、チャンネル変えてくれるか?。」 ソファに座ったまま、一家の大黒柱である鯨は言った。 「うん、わかったよ。」 息子がリモコンを取ると、ボタンを押して番組を変える。料理紹介番組だ。 バリボリとスナック菓子を食べているこの鯨、かなり太っている。立派な肥満体だ。 いや、“重度の”と言い直すべきだろう。それだけの脂肪と肉を彼は体に備え付けていた。 まず顔は完全に頬が膨れすぎて、丸みを帯びているはずの形を崩してしまっている。 次いで首。元々首は無いに等しい鯨族ではあるが、肉が付きすぎて後ろを振り向くのも一苦労。そればかりか、多少、めり込み気味である。 次いで背中だが、本来平らになっているはずの背には分厚い皮下脂肪が詰まりに詰まり、なだらかな曲線を描いてしまっている。 そして最も注目すべきは胸から腹の下にかけてのボリュームであろう。姿勢によっては完全に視界を埋め尽くすほどの太い腹が広がっていた。 その者の名前はビルミート。“この状態”でも最盛期の肥満っぷりに比べればかなりマシになった方である。 とはいえ、またリバウンドし続けている。 自宅謹慎で家に居続けるから、ろくに動かないのも仕方ないが、外出許可の日があっても、ほとんど動こうとしない。 昔はしっかりと鍛えていたのだが、その面影は微塵も残っていない。逞しい尻尾も今や脂肪の詰まった巨大な錘(おもり)と大差ない。 平和な人並みの暮らしは、次第にビルミートの心も穏やかにしていった。 昔のように、大金で豪勢な振る舞いをする事は不可能になったが、十分に幸せだった。 以前ほどの大金は無いとはいえ、彼の重すぎる体を維持・・・ばかりか増量させるほどの食料費は余裕で賄える資産がまだまだあった。 == 家族が旅行に出かける。だが、大黒柱のビルミートだけが留守番だった。 ビルミートはまともに外出できないので、独り寂しさを誤魔化そうと過食を繰り返し更に太っていく。 家族が帰ってくる最終日――- だが予定の時間になってもリタたちは帰ってこない。 次第に不安が募っていく。  突然鳴り響いた電話。まともに動けないが、ビルミートは腕に装着している様々なコマンド使用が可能な腕時計を利用して通話に出る。 受話器から聞こえたのは――-脅迫まがいの言葉。 そして捕らわれた家族の声だった。 膨大な身代金が要求される。 ボイスチェンジャーを使っていたが、相手の話し方や発音には聞き覚えがあった。 誰かはまだわからないが、俺に恨みがあるやつか・・・ 恨みを買う心当たりは、ありすぎた。 そして相手は、港の倉庫にビルミートを呼びつけた。 もちろん、警察に連絡なんかさせてもらえない。 本来ならまともに動く事すら出来ない体だが、ビルミートは火事場の馬鹿力を発揮してそこへ向かった。 倉庫は様々なトラップや仕掛けがあった。 まともに前に進めないようにルームランナーのような移動式床。 ビルミートは息を切らしながら、なんとかその部屋を抜けた。 犯人は、まるでゲームを楽しむかのようにビルミートと連絡をとりつづけた。 おそらく身代金目的ではなく、私怨であり、彼が苦しむ姿を見たいのだろう。 次の部屋には、信じられない食料が用意されていた。 それを全部食べきらなければ、次の扉のロックは解除されないのだという。 数百キロ・・いや、それ以上。ビルミートのぶよぶよとした腹が膨れ上がるほどの量を彼は食べなければいけなかった。 以前、食欲が暴走した時とは違い、かなり大変に感じられた。 ビルミートは自分の強い意志で、それらを食べきった。 そして様々な部屋をクリアしていく。 もうビルミートはパンパンのお腹をひきずりながら、ぜぇはぁぜぇはぁーーとぶっ倒れそうなぐらい疲労しつつ、とうとう最後の扉を開いた。 開いた、といいつつ腹が出過ぎて自分では開けないので、自動的に開くのだが。 ギギギ・・・  「ご苦労様。」 あらかじめ準備していたのだろう。 多くの者が、こちらに細長い筒状の――-銃身を向けていた。 パン、パァン!! 複数回、砲撃音が鳴り響く。 ビルミートは突然の出来事に、何も対応できなかった。 ただ目をぱちくりとさせて―――唖然とした 「お誕生日おめでとう!!!」 家族と仲間たちが、クラッカーで盛大に出迎えた。 そう、ドッキリだったのだ。電話の相手は、以前にも増して肥え太りアンコ型力士みたいになったシャチのアルカンだった。 聞き覚えがあるはずだ。家族もグルで、盛大にビルミートを祝おうとしたのだろう。 どおりで、用意された料理も俺の好物ばかりだったわけだ。 すでに運動しなくなり、このままでは2度と動けなくなる―――と身を案じたリタ達は、なんとか筋肉も少し取り戻そうと途中で色んな仕掛けも混ぜた様子。 おかげで、一生寝たきりと思われた体も活力を取り戻すきっかけが出来た。 「て、てめぇら・・・」 嬉しい気持ちを噛みしめた後、 途中ではこいつら絶対楽しんでやがったな・・・そう思うと、どんどん怒りが込み上げてくる。 「俺をこんな目にあわせて覚悟は出来てるんだろうなぁ?!」 信じられない巨体を動かしながら、大暴れしたかつての組織のボスに多くの部下たちは押しつぶされたという。 「パパ、怒っているのになんで楽しそうなの?」 「ふふ、いつかわかるわよ」 リタがとても優しい目で、その光景(ある意味地獄絵図)を見ているのに子供たちは不思議そうに首を傾げた。 その後、世界一巨大なバースデーケーキを食べ、あれだけ食べた後なのに、たらふく肉や酒を堪能したビルミートは太り・膨れすぎて倉庫から出られなくなり、また新たな問題が生じたりした。 少々、常識外れな肥満体のその鯨は家族と共に幸せな人生を歩んでいけた―――大半は寝て過ごしたが 港町の大食い鯨  おわり