=== 「先生、さよならーー!」 帰宅途中の生徒が、ニコヤカな表情でバイバイと手を振る。毎日、見慣れた光景。 「ああ、さようなら。あんまり寄り道するんじゃないぞ?」 体育教師のワグナス=アバロンも軽い笑みを浮かべて返事した。 そして、生徒が行ってしまうと彼は緊張が解けたのか、大きくお腹の虫がぐぐぅと鳴った。 「ハァ、、、。」 大きく溜め息をして、空腹をおさめるように自分のお腹を擦った。 学校にいる間ずっと音が鳴らないように我慢しているが、これがなかなか辛かった。 以前にも増して[成長]した自分の体はどうも食欲が強すぎる気がする。 大きな大きなお腹は、足元の視界をほとんど妨げてよくつまずきそうになる事もあった。 運動神経は良い方なので、そのまま転ぶ事はなかったが、今の自分の丸々とした体型ならば少しでも傾斜があればごろごろと岩みたいに転がってしまうのでは・・・なんて思ってしまう。 だが実際には重過ぎる体は転がらずに、すぐ静止してしまうだろうな。 それよりも問題なのは、そんな事を考えてしまう程の私の丸さだ。 しかも太りすぎにより、極度の短足でもあるまいに、とうとう私のお腹は地面と接してしまった。 中略 ダイエットがなかなかうまくいかない日が続き、あせっていた。 だが、ある事で、ワグナスは間違った思い込みをしてしまう。 そうか、食べすぎた後パツパツになったお腹は引き締まった体と勘違いされるのか。 ワグナスはそれで暫く太った体をごまかそうと、毎日山のような料理を食べた。それこそ、自分の体重の半分ほど。 それだけの料理を食べれば当然お腹は満杯になり、パンパンに膨れて見える。たまった肉はつまむとばれるが、シルエットだけ見れば以前と同じように引き締まった(?)体だ。 「あれ、ワグナス先生痩せました?前みたいに逞しい体になりましたね」 他の先生たちも、ワグナスのパツパツ気味のボディに勘違い。 それ以降、ワグナスは毎日たらふく料理を食べた。 運動する間も惜しんで、とにかく他の竜の目に付く場所ではお腹を膨らませ、どんどんと体重を増やしていった。 そしてとうとう・・・ 「あなた、最近ちょっと太りすぎじゃない?前はよく私に注意してたのに。」 「ふぅふぅ、そうか?むぅ・・(もぐもぐ)。」 太ったと思われないように、もっと詰め込まないと。 一生懸命に朝食を食べるワグナス。その肉が詰まった巨大なお腹をパツパツにする為には膨大な食事量が必要だ。 そして、それを食べ終わる頃には彼の体重は確実に増えている。おそらく、食後の彼の体重は500kgかそれ以上の増加だ。 ミシミシと椅子が悲鳴をあげている。すでに以前使っていた物とは別の椅子であるにも関わらず、だ。 ますます増えていく彼の体重。椅子の、体重を支える4本足がしなり、折れる寸前になる。 それでもお代わりをやめない。妻のダンターグは、それほど気にしていないのか彼にどんどん追加料理を運んでやる。 そして、長い朝食の時間が終わり、ワグナスが立ち上がろうとした時、 【びき、びき・・バキン!】 「?!」 ドズゥーーーンと地響きを起こして、ワグナスの巨体が床に落ちる。力んだ時の負荷に耐えられず、椅子が限界を迎えたのだ。それもそのはず、数百キロ以上の朝食を平らげたワグナスの体重は8トンを軽く超えてしまっていたのだ。 超肥満竜に対応した椅子でなければ、折れるのは当然のこと。 これが学校ではなく自宅だったのが、せめてもの救いだろうか。 見た目はある程度ごまかせても、本当に太った事実は変わらない。ワグナスは反省し、本気になってダイエットに励んだんだとか・・・。 その後に無理なダイエットがたたり、リバウンドで10tもの体重になってしまい、ろくに通路も歩けないぐらいの巨腹にもなったりしたのはご愛嬌。 終