ギルイット国。この国は資源豊かで、物価も安い。 だが、ここでは罪を犯してはならない。 絶対に。 === 1羽の、鷲(ワシ)の鳥人が謁見の間で、兵士に押さえつけられていた。 目の前には、巨大な熊の姿があった。王冠を被り、ガウンを羽織う。 この国で、絶対的な権力を誇る“王”である。 王様のイメージとしては確かにふくよかな印象があるだろう。だが、この王はいささか“太り過ぎ”であった。 でかでかとしたお腹は丸く突き出て、そのビア樽のようなウエストは3mを軽く超えていそうに思えた。 体重は700kgあるんじゃないだろうか。同じ種族の平均なら400kg前後だろうに。 その熊に似たケモノの王は、目の前の“罪人”を見下しつつ言った。 この国に裁判官はいない。彼が規則であり、全てなのだ。 「貴様の、罪を述べてみよ。」 「ど、どうかご慈悲を…決して、悪気があったわけでは・・・!」 「述べよ。」 有無を言わせぬ重圧的な声に、鷲は震える声で答えた。 「わ、私達の住む地域に水を引き…下流への流れを、減少させました・・・。」 もちろん理由があった。彼らが住む場所は深刻な水不足であり、生活に支障をきたす程なのだ。 何度申請しても改善されず、強硬手段に出たのだ。 「そうか。そんなに水が欲しいなら、たっぷりと与えてやろう。もう欲しいと思いたくなくなるほどに、な。 −−−連れて行け。」 ◆ 「ぅう…」 刑執行の部屋へと連れてこられた鷲は、両手足を縛られ完全に拘束されてしまった。 王は隣で、肉を貪り食いながらその様子を見ている。 執行人が、“ホースを持って”鷲の前にやってくる。そして、無理やり口に装着させ準備する。 【水攻めの刑】だ。 「たっぷりと水を蓄えるが良い。貴様自身の体で、な」 王が合図をすると、ホースの中を勢い良く水が突き進む。 「ムグ!?」 予想以上に激しい速度と量が、口の中を一杯にして、すぐさま大量の水が腹に溜まっていく。 ドプンドプン、ゴブゴブゴブ! 「グムー!?ンッ、ングググゥ!!!?」 ムクゥ、と僅かに鷲の体が膨れる。服が張り詰める。 十数分後。 パツパツになった体で、もう暴れる気力もないのか鷲はなすがままの状態。 あれほどスマートだった体型は、妊娠8ヶ月みたいなぼってり姿へ変わってしまった。 王は満足げにその様子を見て、そして止めさせた。 「ぶはぁっ!ゲホゲホ!!はぁー、はぁー、、、」 たぷんたぷんのお腹をおさえながら、鷲は呼吸を整えるように息をする。 驚くぐらいに膨れた体。 「…反省したか?」 「ハ、イ・・・。」 そんな返事しか出てこない。あんまり苦しくて意識が朦朧としている。 「そうか、ではもう帰ってよいぞ。」 「え?」 これから、もっと酷い出来事が待っているかも…と思い込んでいた鷲は拍子抜けして、マヌケな顔をした。 「貴様の罪に対する罰は、もう終わった。今後は、きちんと報告するように。」 そして鷲は釈放された。 あろうことか、馬車の荷台いっぱいになるぐらいの食料の土産も持たされて。 「怖いのかやさしいのか、わからないなぁ・・・」 納得しないまま、膨れたお腹を摩りつつ鷲は家へと帰った。 その2ヵ月後、鷲は膨れた胃袋と渡された食料のせいで激太りする。 ◆ 【食料攻めの刑】 「げぶぅっ!ふぅー、ぐふっ、ううっぷ!!!」 吐きそうで、吐けない。もうかれこれ5時間は食事を続けている。 “食い逃げ”の罪で捕らえられたこのワニは、「そんなに食べるのが好きなら、いくらでも与えてやろう」と、ひたすら自主的に食わされ続けた。 ボンとお腹は膨れ上がって、着ていた服のボタンを弾けさせた。 どの料理も、異常に美味しいのだが、なにしろ量が異常だ。 ワニは涙目になりながらも、後ろで控える槍を持った兵士と、目の前にいる巨大な熊が怖くて食べ続けた。 いつになったら終わるんだ?もう食べたくない。でも食べなくちゃいけない。 「(あぁ、なんで食い逃げなんかしちまったんだ・・・たかだか数千ゴールドのために、俺は今こんなに苦しむ羽目に、、、にしても、うめぇよこれ) うげぇえっぷ!!!」 食欲増進ドリンクもどんどんお代わりさせられ、ワニは自分が腹減ってるのか満杯なのか、その感覚も麻痺してきた。 もちろん休憩も含めるが、10時間も立つとワニのお腹は見事なほど風船みたいに膨らんでパンパンだった。 なぜ、こんな罪の清算の仕方をさせるのか。 王の目的は、ひとつ。罪びとに、とりあえず理由をつけて“太らせる”事。 体重が800kgぐらいに見えるこのぶっくらぼってり、でっぷりした熊の王様は、どんどん太っていく自分の体がコンプレックスだった。 いっそのこと、何か法律を作って国民全員を自分と同等かそれ以上に太らせたいぐらいだったが、さすがにそれは無理。 という事で、罪人に、懲役期間を無くす代わりに、“体重増加”の枷をつけて太らせるのが目的なのだ。 ◆ 「ぐぶっふぅーーー!ひぃはぁ、ふぅへぇ、も、もう無理、でずっ。王様・・・助げで、くだざいぃ」 推定体重800kgぐらいに肥え太ったワニは、満月を更に丸く、大きくした感じの体型にまぁるくなってしまった。 何度も月賦を出して、今、本来腹が膨れた程度では飛ばないはずである一番上のボタンも弾け飛んだ。 「よし、もういいだろう。」 満足そーな笑顔で熊の王はワニのお腹をなでなでと摩ってあげる。 別に労わってあげてるわけでなく、たんにデブり具合の確認なのだが。 結局10日間も拘束して食料攻めを続けた結果、ワニは本当に太ってしまった。“以前の”王様以上の体重だろう。 以前の、というのは、つまり王もまた日々成長しているからだ。 罪を犯した者を太らせ安心する度に、食事量を増やしてしまう。 体重850kgぐらいに見える熊は、パツパツの王族衣装を羽織い、日々その体に脂肪を積み重ねていく。 ----ギルイット国。そこは資源が多く、物価が安く、 そして国民の平均体重が異様に高い国である.....。