元ネタ:牛とトッケビ ロクス:もふもふメタボ腹の赤竜。お腹の中にスライムがいて、共生している。会話?も可能  ‡ story ‡ ある日、散歩をしていたロクスは小さくて薄くて黒い半透明なスライムを見かけた。 その黒いスライム(クロイムという名前みたいだ)は、非常に弱っており、食べ物を取り込んで栄養にする体力もなく、このままでは死んでしまうかもしれない。とのこと。 「一ヶ月の間だけでいいんです、貴方のお腹の中で養生させて下さい。お礼はします。」 クロイムは懇願した。ロクスが消化した栄養なら、取り込めるらしい。それに、ドラゴンの体内にいれば悪い菌からも守って貰える。 正直厄介事はめんどうだったが、元々お腹にいるスライムと一緒にお願いされ結局断りきれなかった。 そして小さいとはいえ、そこそこ飲み応えのあるクロイムをお腹に収納すると、ロクスのお腹はまた一回り(判別は不可能な程度だが)大きくなった。 クロイムは、不思議な力を持っていた。昔 痩せていた時期よりも体が軽く力に満ち溢れていた。 空を飛んでも全く重くない。 しかも、やたらと幸運が続いた。アイスを買えば当たり棒が連続で出たり、その場で当たるキャンペーンでポテチ1年分が当たったり。 聞くとやっぱりクロイムの能力らしい。 体力が戻ってくると、クロイムの力は更に強まっていった。レストランの食品券を貰ったり、菓子店の試食会に遭遇したり・・・。 1週間後。 「うーん、この頃はちと食いすぎたか・・・?」 気のせいだろうか。 なんか前よりも腹がデカくなった気がする。 確かめるように膨れたソレ(腹)を撫でると"ぐぐぅーー”と強く音が鳴った。 ついでに、もこもことお腹も少し動いた。 クロイムの為に、普段以上に多く食べているせいだろう。 と深く考えずにロクスは昼食を食べまくった。 カルビ味チャーハンに始まり、大盛りのエビピラフ、カツ丼を2杯、親子丼、超大盛りの海鮮丼。 どれも食品券で手に入れたので無料だ。 まだまだ食えた。塩焼きそばに続いて、中サイズのお好み焼きを3枚。辛いものも食べたくなったので激辛カレーも山盛りで平らげた。あんまり辛かったのでブルーベリーヨーグルトも一緒に。 その後にロクスが食べたデザートはコーラフロート×2、プリン3個、ティラミス1個、苺ショートケーキ1ホール、バナナクレープ2個、洋ナシと巨峰のソースをかけたレアチーズケーキをそれぞれ2個。アップルパイ1枚。途中飲んだコーラとオレンジジュースは4本ずつ。デザートは別腹とはいうが・・・食べすぎである。 「うぇっぷ。ふぅーーー、食った食った!」 見事に巨大化したロクスのお腹。食べ過ぎた直後、そしてクロイムが元気になって大きくなったのもあるが、それ以前に脂肪を蓄えすぎによって形成された現象だ。 早い話がロクスのメタボ率は更に悪化していた。ロクスは自分の食欲が知らず知らず増え続けている事に気がつかない。それに、体は軽いままだったから尚更だ。もし、鏡で全身をくまなくチェックしていたら一回り以上太ってしまった自分に違和感を覚えただろう。 そして、約束の1ヵ月後・・・ ロクスはすっかり丸々とした姿になっていた。 ぽよんぽよんのお腹は、大変立派になっており、歩く際、がに股状態にするほど足をおいやっていた。 「ふぅふぅ、おい、今日が約束の日じゃねぇのか?」 超巨大なホットドックを頬張りながらロクスは催促する。流石の彼も、自分が太ってしまったので早くクロイムを出してダイエットしたいと思っていた。 「すみません、まだ完全に体力が戻っていないんです、、、あと少しだけ居させて下さい」 まぁ、あと少しぐらいなら・・・そう思いロクスは次にドーナツを食べ始めた。 ロクスも、クロイムもどんどん肥え太っていった。 しかし、それから3日経っても2週間が過ぎてもクロイムは出て行こうとしない。 とうとう再び1ヶ月が、つまりクロイムを取り込んでから2ヶ月経ってしまった。 ロクスのお腹はボンッとかなり膨らんでおり、全体的にかなり丸くなってしまっていた。 「おい、もういいだろ!いい加減出て行って貰うぜ。」 しかしクロイムは返事しなかった。 「出て、いけっての!」 もふもふな手で、ぐい、ぐいとお腹を押して無理やり吐き出そうとする。 「ぅ、、、うぐ、、、ぶはっ!」 しかし全くお腹から移動する気配がなく、ぐぎゅるるる〜、とお腹の虫が大きく鳴り響くだけで何も変化しない。 いや、空腹感だけが強くなってしまった。 仕方ないのでお腹の中に居るスライムに頼んで、追い出してもらうことにした。 だが・・・ 「っ・・・!・・・・んん・・・・・!???」 苦しい。非常に辛い。呼吸が出来ない! クロイムが途中で詰まっているのだ。 ジタバタと苦しむロクスの異変に気がついて、スライムはクロイムを押し出すのを止めた。 栄養を取り込んで太りすぎたクロイムは、ロクスの体にフィットしているうえに、巨大すぎてつっかえてしまうのだ。 まさか、出せないだなんて・・・ 「くくくっ。馬鹿な連中だ!」 クロイムが、声色を変えていきなり笑った。 「な、なんだと?」 「俺の罠にまんまとかかりやがって。本当にお人好しだな。」 この黒いスライムは、デビルスライムという恐ろしい寄生型の悪魔であった。 助けて貰うついでに、力を与えるふりをするが、宿主に取り付いた後は肥え太って意地でも出られないようにする。そしてエネルギーを溜めるために、宿主にたらふく食料を与え一部を横取りし続ける。 食欲が増えたのもデビルスライムの恐るべき能力であった。 ぐぎゅううぅうるるるる!!! 強くお腹から音が鳴った。まるで2週間ほど絶食したと錯覚するほどの飢餓感がロクスを襲う。 「ぅ、う、畜生・・・!!」 力を取り戻したデビルスライムは、料理を召喚することすら可能だ。 目の前に出されたフルコースをロクスは乱暴に貪り続けるしかなかった。 時間の経過とともに、ロクスの腹部がむくりむくりと大きくなっていった--- 1週間が過ぎた。 暴走状態のロクスの食欲は凄まじく、お腹がパンパンになった今でも空になった皿を積み重ね続けていた。 「ふっふっふ、げぷ、今回の宿主は凄まじいな。さすがは竜の血を引く者。これならば、偉大なるスライムに到達する事も出来る・・・! だが少々キャパシティが高すぎる。うっぷ、体がはち切れそうだ」 現在の姿は見えないが、どうやら栄養を吸収し続けるクロイム(デビルスライム)も非常に太ったようだ。どうやら、想定外なほどの食欲らしい。 それを聞いて、ロクスはある事を思いついた。ある意味お約束のアレである。それは吸収限界突破による状況改善! ロクスは、それこそ文字通り死ぬ気で目の前の料理を食べ始めた。 空になる度に、自動的に生成されるため無くなる事はない。 寝る間も惜しんで食べまくる!バクバク、ムシャムシャ、ガツガツと小気味良いリズムが一日中続いた。 「う、ぐ!?なんだ、こいつの食欲は・・・?!」 デビルスライムがロクスに目をつけた一番の理由はウエストである。食いしん坊そうなお腹をしていたからだ。(スライムが中にいるせいだからな!byロクス) だが、力量を見誤った。 ロクスはでかでかと太った体を青空の下、仰向けになった状態で料理を食べ続けた。食欲はどんどん増えているので、普通に美味しい料理を食べて満足できているのは秘密だ。 「むむむ、このままでは、私がパンクしてしまう・・・くぅ・・・!!」 もはや短期間で肥え太り膨らみ過ぎて、耐え切れなくなったクロイムは体を細めて、なんとかロクスの口から這い出るのだった。 ◇ 元の何倍にも巨大化した黒いスライムは、しょんぼりと肩(?)を落としていた。 「ったく、お前のせいで酷い目にあったぜ!どうしてくれんだよ、この体!!」 「うぅ、ごめんなさい、、、」 体内に居ないと非常に弱気なスライムである。 超巨体となったロクスの威圧感が半端無い。 「私の溜めた魔力で、元には戻します・・・もう悪い事して力は貯めません。」 よほど苦しかったのか、クロイムはすっかり邪気が抜けてしまったらしい。 いやそれよりも 「なっ、元に戻せるのか?」 「は、はい。それぐらいの力はあります。」 「な、ならよ!お前と会った時より、その、ごにょごにょ・・・。 ちょっとだけ、スマートな体型にまで、痩せてくれると、いいなー、なんて。別に俺は太ってたわけじゃないけど、もう少し痩せてても問題ないというか。」 恥ずかしそうにいい続けるロクスだが、きっぱり言われた。 「あ、ごめんなさい。私が原因で起きた宿主の不幸は打ち消せますが、それ以外は無理なんです」 「・・・・あ、そ。」 なんだか自分がデブ竜だって認めてるみたいで恥ずかしかったのに・・・言い損だった。 結局、ロクスはぷちメタボドラゴンのままでしたとさ。 おしまい