ダグラス=マージ アズライト地竜(♂) 水色と青の中間色? マージベーカリーの主人 ワグナス=アバロン:ベクタ黒竜(♂) 体育教師。 [B食が進めば山となる] ダグラスのパン作りに勢いが乗ってから、数日が過ぎた。 太ってしまう事を意識しないで食べまくったせいか、体重はあっという間に増えてしまい900kg−−−いつの間にか肥満児の息子に近づいていた。 身長はコープより高いので、ある程度はその分がカバーしてるのだがこの短期間で増える量としては多すぎる。 実際に、作業服はかなりぴっちりとしていたし、動作も本人や周囲は気付かないレベルだが遅くなっていた。 しかし仮にこの時点で太り始めたことに気づいたとしても、スランプから抜け出し上機嫌になっていたダグラスはおそらく気にしなかっただろう。 いつものように、ダグラスが新しいアイディアを生み出そうと街に出た日の事。 近所付き合いや態度も良い彼は、けっこーな割合で道行く竜たちに挨拶される。 「おや、ダグラスさん。今日も良い天気ですな。そうそう、この間の新作パン、美味しかったですよ!家内もかなり気に入ってましてね。今度また買いに行こうかと思ってるんです。 あっと、お礼といっちゃあなんですが、うちで採れた果物をどうぞ。」 そして手渡される大きな大きなリンゴ。小食の物ならデザートの別腹に入らないぐらい、といえば流石に大げさだろうか。 真っ赤に熟して、蜜もたっっぷりと入っていることだろう。 お礼を言ってそのリンゴを一口カジると、シャリっと心地良い音がして、予想通り酸っぱさの後にほんのりと甘い蜜の味が口内に広がった。 予想以上の美味しさを感じて、表情はそれほど変わらないがダグラスは気分がよくなる。 「うむ、今度フルーツサンドで新しい物に挑戦してみようか。」 独りごちて、彼は新作パンを思案する。こうした日常でのやり取りの中から生まれる事はよくあった。 しかし、商店街を歩いているとものを貰う事が非常に多い。 しかも、基本的には食べ物だ。 みんなが食べれるようなお菓子の詰め合わせや果物のセットを持ち帰ることは多いが、 一つだけだと家族と分けあう事は出来ない。 となると、必然的に食べ歩きするしかないのである。 「おぅ、マージさん!」 元気な声がかけられ、その方向を向くとファストフードを取り扱うオープン形式の店の主人がニコヤカな顔を見せていた。 脂っこい、料理という名のおやつ類が店のメインなだけあって、それを普段から食らっているだろう主人もかなり太っている。 前掛けは大きくせり出したお腹を覆いきれていない。二の腕や背中にも余分な脂肪がたっぷりまとわりついている感じだ。体重は、推定だが私の3倍かそれ以上あるのではないだろうか?(※もちろん、現時点のダグラスの体重である。) 「こんにちは。」 近づくと、相変わらず良い匂いが漂ってきていた。特にポテトの香ばしい匂いはかなり食欲を沸かせてきて困りものだ。 「いつもお宅の息子さんには世話になってるよ。 しっかし、旦那さんは息子と違って相変わらず痩せているなぁ。一家の大黒柱なんだから、俺みたいに、もっともっとドーンと構えてなくちゃいかんぞ。まぁ俺はちっとばかし太りすぎだがな!」 店主は、ガハハハと豪快に腹肉を揺らして笑う。 「うーん、これでもワシは少々太り気味だと思うのだがーーー。」 昔より、ふっくらした自分の体を見つめてみる。 確かにコープ達に比べると、ウェストは半分ほどだが、、、そんなに痩せているだろうか? 「それで太り気味だったら俺はどうなるんだよっ。 そうだ、宅の息子さんにいつも贔屓にさせて貰ってるお礼に、ほい。」 突き出されたホットドックに思わずダグラスは反射的に手を差し伸べて受け取ってしまう。 ケチャップとマスタードがたっぷりついている。 パンを使った食品はダグラスの十八番だが、そんな彼の舌も満足するこの店自慢の一品である。 買い物客の大半が、ここのホットドックはセットで頼むほど人気なのだ。 気がつけば特性のホットドックはあっという間に彼の胃袋に収まり、彼の体重の増大を微小ながら手助けする結果になった。 散歩に要した時間は、1〜2時間程度であった。 しかしながら、結局彼がその日“差し入れ”により摂取した食べ物の総量は昼食1回分に相当するカロリーであった。 おやつ、として片付けるにはあまりに多い。 ダグラスは、以前より食べる量も確実に増えていた。以前の彼なら、腹八分になっていた時に断っていただろう。 だが今日に限らず、ここ最近は手渡される物「すべて」を受け入れている。 しかも、お礼として別の日に新作パンを持っていくと、そのお礼に更に差し入れを貰ってしまう。 その小さな積み重ねは、着実に蓄積されていきーーーダグラスの体型を更に変化させる原因となっていった。 いよいよ、彼の体重も4桁に到達する時が近づいてきたのかもしれない。 [†] コープは夜中、ガサゴソとした音を聞いて目を覚ました。 どうやら下の階から音が聞こえているみたいだ。 目をこすりながら、なんとなくコープは気になって足を運んだ。 小さいが、話し声も聞こえる。 フラー先生と、お父さんの声・・・それに、なんだか良い匂いもする? コープはクンクンと鼻を嗅ぐ。美味しそうな匂いに、ぼんやりしていた意識が覚醒し始めた。 リビングには明かりがついており、ダグラスとフラーは何やら小声で談笑しているらしい。 「いや、ハハハ。確かに今日の夕食はいつもより少なかったですからね。」 と、これはフラー先生の声。 「今日は仕事が多くて、準備にあまり時間をかけられなかった様だからな。モグモグ。」 返事をするダグラス。彼らは会話をしながらもぐもぐと口を動かしている・・・。 どうやら、夕食が足りなかったらしく夜食を食べているようだ。 それにしたってこんな真夜中に食べる事も無かろうに。吸収が高くなる時間帯に食べていれば彼らは益々太ってしまうだろう。 「あー、ふたりともずるいよ!」 扉を開けてコープも部屋に入る。中はほわーんとした、甘い蜜の匂いがした。 焼いた食パンに、たっぷりとハチミツを塗った物を今は食べているようだ。 しかし、開封済みの袋を確認すると、すでに8切れの食パンが入っていたはずの空袋が2つほど。 最低でも、彼らはすでに8枚ものパンを夜食として平らげていたようだ。 よくよく見れば、マーガリンやジャム、バターなどがテーブルに並べられていた。 「コ、コープ君?いや、その、こんな遅くに起こすのも悪いかと思って。ハハハ・・・」 「やれやれ、全くお前という奴は・・・」 食い意地が張っているな、と言おうとしてダグラスは言葉を止めた。 なぜなら、自分もフラー先生も、全くひとのことを言えないのである。 「さて、コープも起きたことだしホットミルクでも作ろう。」 妻は起こさないように、静かにダグラスは準備をしてミルクを温めた。 ホットミルクはそのままでも甘いのだが、砂糖は各自で追加。 ダグラスはシュガーを1本。フラー先生は2本。 コープに至っては砂糖を2本入れたホットミルクを複数回、バターやハチミツを塗ったパンと一緒に飲んでいたのだからとんでもない。 結局、軽くパンを胃に入れると、余計に小腹が空いてきたせいで、その後本格的に夜食を食べる事になった。 ラーメンを煮ると、大盛りの器で3杯。腹一杯になり眠くなるまで彼らは食べてしまった。 そして翌朝の朝食ーーー普段と変わらぬ量を摂取する彼らの胃袋は非常に優秀と言うべきか問題があると言うべきか。 コープもフラーも既に以前より体重が200kgほど増えており、細身だったダグラスもとうとう4桁の大台に突入しようとしていた。 -つづく-