・ワグナスと食料大戦争〜肥満トリオとの戦い〜  ワグナスは、必死にダイエット指導をする。しかし、コープ、リガウ、オーエンは一向に体重が減らないばかりか増える一方。 「はぁ、彼らはなんとかならないものかな。」 いろいろなメニューを考える。彼らも、しっかり提示された運動をクリアしてる。それに、リガウは部活もやってるしもう少し痩せてもいいのではないだろうか?  その謎を探るべく、ワグナスは連休を使って”彼ら”と一緒の行動をする事にした。  「ええ、先生と一緒に?」 「お、おいおい勘弁してくれよ先生〜。休みの日ぐらいはゆっくりさせてくれよ;」「ぅう、、、。」  3匹とも驚いたり、不満そうな顔を見せた。  「なぁに、そんな顔をするな。今日は私はただの同行者。 お前たちは自由にしていいぞ。」 ニッコリと笑顔を見せてみる。 でも警戒されてしまった。「絶対監視する気だぜ。」「そうかなぁ。でも、こんな機会は滅多に無いし、一緒に街を出歩いてもいいんじゃ・・」「甘い!甘いぜコープ。 ワグナス先生の事だ。きっと何かにつけてトレーニングさせるにきまってる。」「あ、僕は、その、体重気になってるしそれでもいい・・・かなぁ、なんて・・」 ヒソヒソ話のつもりだろうが、全部聞こえてくるのはどうしたものか。   「ふぅ、そんなに信用ならないか。・・・約束する。今日は学校の事も、補修のことも完全に忘れていい。 なんなら、そこの店にでも入るか。」  「「「えぇ?!」」」 まさか”ワグナス先生”から食事の誘いを受けるだなんて。 明日は槍が降るんじゃねぇか、なんてリガウが失礼なことをいってる。   そ、そんなに私は普段厳しかっただろうか。 そんな風に思われてたのはちょっとだけショックであった。 「ならさ、先生!そこの店行こうぜ。俺たち、今日はそこの定食屋いくつもりだったんだ」 リガウが指差す方向からは、焼き鳥や肉、ラーメンなどの美味しそうな匂いが漂ってきた。 コープの腹の虫がぐぅうと鳴る。  ワグナスは、その後コープたちと行動を共にすることで、なぜ彼らがまったく痩せないか。その理由の一端を垣間見る事になった。  最初の定食屋。彼らは3品を注文し、つまみ類も5皿頼んで・・・当然、ひとりでその量だ。それらをスープも残さず食べつくした。 ワグナスも、大柄な体格だし割と大食漢なので彼ら以上に食べて見せた。  先生がまったく注意しない。ばかりか、談笑もしてくれるのが嬉しかったのか、コープたちはすっかり緊張を解いてくれたようだ。  「先生、それじゃあ次の店も一緒に行こうぜー!」 「ん、あぁ。今日は存分に付き合うとも。」 なるほど、飲み会でもないのに彼らは2次会があるのか。「(これは太るよなぁ・・・。)」  と、この時点だと甘い考えを持っていたことを後悔する。  店に入ってから30分ほど経った。もちろん、待ち時間は無いのですぐに食べ始めたのだが・・・「店員さーん、追加でこのフライドポテト!XLでお願いしま〜す!」 「あ、それじゃあ僕はそれに追加でコーラフロートもう1杯だけ・・・。」  なんという事だ。 控えめに見えたオーエンですら、食うわ飲むわの、鯨飲馬食状態ではないか。 「お、お前たちなぁ・・・;」 喉まででかかったところで、その先をいうのは止めた。いかんいかん。今日は彼らの自由な行動を見て、私が学ばないといけないのだから。  「すまない、私もアールグレイを2杯。それと、マーボー茄子を1皿貰おうか。」  ただ待つのも性に合わないしな。 なんだかんだ思いつつも、ワグナスだって相当な量を食べていくのだった。   1時間経過後・・・ そこそこ満足したのかコープは丸々としたお腹を撫でながら、可愛らしい笑みを浮かべて言った。   「ぷはーおいしかったね先生!」 「ん、あぁ。そうだな。」 テーブルの上にあった付近で口元を拭くワグナス。ふと、テーブルの上を見たら自分のスペースになぜか空のお皿が10枚も重なっていた。 お、おかしいな?こんなに食べたのだろうか。 彼らと、気楽な会話を楽しんでいたら気づかないうちに食が進んでいたようだ。  そうか・・・彼らは、日々、食事を仲間たちと楽しんでいるんだな。  だからといって、お前たちは太りすぎだからな?!正当化は出来ないんだぞ。  と、言いたいが我慢我慢。 ぐいぃっとサイダーと一緒にその言葉を飲み込むのだった。  「さて、それじゃあ行くか!」 リガウが立ち上がる。腹いっぱい食べたと思ったがやけに元気だなぁ。  「ねぇねぇ、次はどこだっけ?」  ん、今、次と聞こえたが。気のせいだろうか。  「ほら、最近出来たお店!あそこの特性ソースのピザは凄い評判いいみたいなんだって〜!」  「  「やれやれ、明日の相談をもうするなんて気が早いなお前たちは。」 「え、先生何言ってるの? ”次の”お店の話だよ〜(笑)」  コープも、オーエンも冗談を言っている様子はない。ということは、つまり・・・。そういうことなのだ。  「まさか、3軒もハシゴするとは・・・そりゃ太る。」 むしろ、この体型を維持出来ていた事が幸運だったのか。 私のトレーニングは全く効果ないんじゃないか・・・と落ち込んだ事もあったが、もし補修をしていなければ今頃この肥満すぎる生徒たちはどうなっていたことやら(汗)  いろいろ考えながらも、私は気がついたらたっぷりウィンナーのトマトソースピザLサイズを注文して席に座っていた。 あれだけ食った後なのに、リガウ達はまるで昼食を今から始めるかのように、メニューを楽しげに見ている。 やれやれ、食いしん坊というか、なんというか。 原因はやっぱり食べすぎだったか。  ペースを考えているのかいないのか、いきなり3枚のピザを注文するコープやリガウ、オーエン。3にんで3枚じゃない。合計すると9枚なのだ。 「(もしゃもしゃ)ん、このチーズおいしいな。」 届けられたピザを口に入れたとたん、とろけるチーズに程よいスパイスが刺激する。 強めの香辛料が、食欲を刺激していい感じにお代わりしたくなってきた。 「ふーむ、これはなかなか・・・。」 1時間が経過しているが、ワグナスは気づかない。 「あ、先生こっちのも旨そうじゃねーか?!」 「お、それも気になってたんだ。」 「・・・一緒に注文しておくか。」  ワグナスは、生徒たちの勢いに目を向けすぎていて、自分が食べ過ぎていることをすっかり忘れていた。 それに、今日、彼は全く運動をしていない。せいぜい、店に移動する際の歩行程度だ。 現時点でも、一日の摂取可能カロリーは大幅に超えてしまっている。 翌日には彼の体脂肪となって蓄えられるのが明白である。  ワグナスが、苦しくなった腹のせいでハッと我に返ったのは、6件目の店で特大ラーメンのチャレンジを終えてスープを全部飲み干した後だった。 「な、なんで私はこんなチャレンジを・・?」  客がざわめいている。 「すげーな。あの子達とその保護者。全員がクリアしたよ・・・。」 「特にあの黒竜。ベクタの竜だけあって凄いな、2度目の挑戦だぜ?」「え、そうだったのかよ!」  そ、そうだった。なんとなく食欲に勢いがついて、というかつきすぎて、この際だから彼らと一緒に食べまくろう、と途中の店でアルコール飲料を飲んだのはまずかった・・・! 自分の姿を見る。 ぅ、テーブルに腹が食い込んでる。 隣を見ると、コープたちもはち切れんばかりに太っており、いくら休日だからって、どう見たって食べすぎであった。 これは、止めないと大変なことになるのではないか? しかし、男と男の約束を、反故にするわけにはいかない。 連休の間、彼らと行動をともにし、今後の補修の改良の為にも・・・!    さすがに、みんな苦しくなったのか、暫く公園のベンチで休むことになった。 私が座ったときに軋む音が聞こえたけど、古いベンチなのだろう。・・・そうであってくれ。         「えへへ、先生やっぱり凄いよね。そんなに食べれるのに、運動も凄くて。」 「俺もワグナス先生ぐらいでけー体になりてぇなぁ。」 「あのねぇ・・・。」 しかし、今日は随分と食べたなぁ。 と、1軒目から順番に思い出していく。 ん、待てよ。と、 ワグナスはある事実に気がついてしまった。        「”私が一番食べてる・・・。”」  そうだ、どの店でも、結局皿を一番積み上げていたのは私じゃないか!   い、いや。彼らが大食漢とはいっても、子供と大人。 それぐらい差があっても何もおかしくはない。 「先生ー、そろそろデザート食べに行かない?」 「賛成〜」  彼らはまだまだ食欲旺盛らしい。 かくいう私も、わずかな休憩でもう十分だった。 熱かったり、   ありがとうございますw(・w・*) 辛いラーメンばかり食べていたら甘いものも食べたくなってきたところだ。 完全に吹っ切れた。 今日は好きなだけ食べよう。 日頃のストレスを全部食事で解消するかのように、ワグナスは次の店でも巨大なドームのバニラアイスやパフェを食べ、夕方になるまで彼らと行動を共にするのだった。  帰宅後・・・  「ただいま・・・うぷ。」  「お帰りなさい、あなた。 夕食の準備出来てるわよ。」  「え。その、私は今日は、だな−−−」   「!?」  目を見開く。台所から漂ってくる匂いをすぐさま嗅ぎ分けた。 この、香ばしく、ツンとした唐辛子の香りは・・・!  「食欲ないの?久々あなたの好物作っておいたんだけど」「お代わりの分はあるか?」  妻が言葉を言い終わらないうちに、そんなことをつい聞いてしまった。 ハッとして自分の食い意地の張った考えに思わず赤面してしまう。 今日、あれだけ食べたのに!         後日・・・連休をコープたち肥満トリオと過ごしたワグナス。彼らがあそこまで太り、また痩せない理由はちょっとだけわかった。 が、その情報と引き換えに、余計な報酬がワグナスに与えられる。 ウエストが増えた。脂肪が増えた。お腹の肉が 以下省略   「うぐぐ・・・!;」  大幅な体重増加、そして運動不足による筋肉量の低下によってワグナスは日に日に超え太る体質になってしまった。 2トンだった頃も雪だるまみたいな丸さであったが、3.5tとなった今ではより一層球体のように丸々とぷくぷくとデブってしまい、これでは体育教師としての面子が全く無い。 結局、彼は次の連休時に本気でトレーニングを続け、見事以前のような固太り・・・もとい、体育教師のレッテルを張るに相応しい筋肉質、かつちょっぴりメタボな竜として復帰するのだった。             おまけ 「あら、あなたもう痩せたのね。さすが体育教師やってるだけはあるのかしら。」 だぶついた二の腕の肉を動かして、お菓子を口に入れながら、ダンターグが言う。  自分のダイエットに集中していたせいで、妻が知らないうちにリバウンドしていたのだ。 体重計で測ったところ、+1500kg。今度はまた彼女のダイエットにも協力しないといけないな。 とほほ・・・   ガックリと肩を落とすワグナス。 彼がストレス太りしてリバウンドしない事を祈るばかりである。   おしまい