[アイスを愛す竜] クレイフ=ジェイダイトは大のアイス好きである。一言にアイスといっても、多々あってその種類は数百、いや数千ではとどまらない。こまかい組み合わせも含めれば、無限にも等しいのが食の世界なのだ。 「あ〜〜ん。」 パクリとひとくち、アイスを頬張る薄い碧色をした竜がいた。その一口が約200kcal程度だったろうが、その子は気にしない様子でパクパクと食べ続ける。 他者の視点から見ると、一目で“お菓子好き”と判別されるであろうふっくらとした体型の持ち主であった。 ぷくぅっと膨れたお腹は丸みを帯びてた。別に寒い地方の出身特有の脂肪の蓄えをしているわけじゃないのにね。 頬っぺたにくっついた生クリームをペロリと舐めとると、クレイフはご馳走様と言って紙の容器をクシャクシャに折ってゴミ箱にシュート。 「あぁ美味しかった!さてと、次は新発売の生キャラメルソース入り大福アイスにしようかな。」 “何十往復目”か判らないが、とにかくクレイフは再び店に入るとクーラーボックスの中からアイスを一つ選択してカウンターへ向かい、同じアイスを4個購入した。 時刻はだいたい午前11時。朝10時のおやつとして食べ始めたアイスだが、すでに1時間以上食べ続けていた。 そして気が付けばお昼時になっていた。 「そういえばもうお昼ご飯だっけ。」 お菓子をあれだけ食べたのに、昼飯はどうやら別腹みたいだ。 冷やし中華とサラダセットを胃袋に納めると続いてすぐにデザートを注文した。杏仁豆腐といちご乗せプティングだ。アイス以外もかなり大好きらしい。 そして3時になると、再びおやつタイム。ここは驚くほどに食品の物価が安く、お金を食品で使い切ることは限りなく不可能に近い・・・と、これは言いすぎだがとにかく呆れるほど良心的な低価格だった。生産量と需要が異常に多いからなのだろう。 しかし手軽に食べたい分は買い漁る事が可能である。ど、同時に本来は必要の無いエネルギーもどんどん蓄えられてしまう。 翌日、軽い気持ちで量ってみると前日比+20kg。気持ちに反して、体重はきっちりどっしり増えていた。 「あれ、またちょっとだけ体重増えてる?」 全体重のパーセントで見ると、+20kgといえどそんなに驚くほどでは無いのだろうが、この国に滞在して以来、体重が増えるのは日課みたいなぐらい自然なことでありクレイフはあんまり気にしなくなっていた。 それから2週間は過ぎただろうか、クレイフはすっかり肥え太ってしまい、お腹の前面部に手が届かないほどに・・・−−−と思ったがそれは元からだったが、とにかくウェストは一回りか二周りは大きくなってしまい妊婦でもないのにお腹が際立って大きくなった気がする。 「(最近、またちょっと太ったかな?)」 そう思いつつ、3本目のソフトクリームをぺろりと平らげるクレイフ。 周囲には彼より何倍も太った竜や獣や怪獣は山ほどいるので、全く注目されることは無い。 “ちょっと”ではなく“かなり”体重が増えていたんだけど−−−。 その事にやっと気づいたのは、更に後のことだった。 そして一ヵ月後、最近気に入った公園のベンチに座りながらアイスを食べ続けるクレイフ。 ぽかぽかした陽気と、ひんやりしたアイスの冷たさが程よいバランスで穏やかな午後を満喫していた。 買った分全てを食べ終えると、立派なアイス腹を撫でつつ、近くのアイス屋さんに数十個新たに補充しに向かった。 (説明しよう。アイス腹とはアイスを食べ過ぎて大きくなったお腹であり、触るとモチモチふわふわしつつ、少しひんやりして気持ち良いのだ!!もちろん大嘘である) ドスゥーン、と音を立てて再びベンチに座る。 看板に「****kg以上の方は、1ランク上のベンチにお座り下さい」と書いてあるが、自分はまだそこまで太ってないからだいじょーぶ、と根拠の無い考えで先ほどのように座る。 ギシ・・・ギシ、ミチミチと破滅的な音がベンチから聞こえてくるのだが、クレイフは気づかない。 またまた追加したアイスを食べ終え、さらに追加。 (ギギギ、、、ビキッ) だんだんベンチの脚がひしゃげてきた。 そして、とうとう・・・・ベキッ、バキ!!ドズゥーーーン!!! 「わぁっ?!」 大きな音を立ててベンチが潰れ、クレイフは大きく尻餅をついてしまった。 この国では日常茶飯事の光景だが、まさか自分がこんな事をするなんて・・・。 自分の体重に気づき、体型を改めて確認したクレイフは、途端に恥ずかしくなってきた。 「(うぐ、いつの間にかこんなに太っちゃってたなんて・・・・・・・・・お腹もぷよぷよだ。)」 流石に体重が倍以上になっているとは思わなかった。 お腹も地面に余裕で届いちゃってるし・・・そういえば、どーりで最近歩きにくくなっていたわけだ。 慣れって怖いなぁ、と感じつつクレイフはその後がんばって摂生してダイエットし元の体型に近づきましたとさ。 おしまい 挿絵ありにつき、ブログ記事推奨