好きだ――― 大好きだ――― 俺は彼女が好きだ――― 彼女のことを思うと夜も眠れない 彼女のことを思うと食事も喉を通らない 我ながらベタな表現だと思う でもそれぐらい彼女のことが好きだった だけど絶対にこの恋は叶うことは無い だって俺は人間で彼女は魔女 寿命が違いすぎる だから俺は想いを伝えないで、ただ彼女を見守るだけにすることにした ある日彼女が俺のところを尋ねてきた 彼女と話すのも久しぶりだ いつになく饒舌になる俺に彼女は笑って返してくれる その笑顔にドキッとしながら俺は話を進める そんな他愛の無い時間でさえ愛おしい 彼女の顔を見るたびに想いは募っていく ―――俺はお前が好きだ――― という言葉を無意識のうち危うく出しかけて押し止めようとする すると彼女がこう言った ―――今言おうとした言葉を言って ―――えっ? ―――今何か言おうとしたでしょ?それを言って ―――…………お前が………好きだ……… ―――ふふふ、やっと言ってくれた ―――えっ? ―――知ってたよ。あなたが私のことをどう思っているか。だってあなた隠し事下手なんだもの 隠していたつもりでも全て丸わかりだったわけか……… そうとわかるとなんだか急に恥ずかしくなってきた ―――どうして言ってくれなかったの? ―――だって………お前と俺じゃ寿命が違いすぎる。いずれ俺は老いて死ぬ存在。だから……… 彼女の指が俺の唇にあてられる それ以上言わなくてもいいということだろう ―――私もそう思ったわ 彼女が続ける 私とあなたは違う種族 あなたはいつか死んでしまう存在 でも私はあなたが死んだ後も生き続ける そしたら私はずっとそのことに苦しみながら生き続けなきゃいけない それはすごく辛い……… どうせ報われない恋なら、抱かなければよかった どうせ届かない指先なら、伸ばさなければよかった どうせ手に入らない輝きなら、知らなければよかった どうせ叶わない願望なら、望まなければよかったのに――――― それでも、私は抱いてしまった 伸ばしてしまった 知ってしまった 望んでしまった たった、一人 たかが、一人 ただの、人間 一人の、人間 そんな一人の人間に、私は叶わない恋をしてしまった ―――でもね、思ったの ―――何を? ―――そんなもの本当の愛の前ではなんの障害にもならないことに ―――…………… ―――確かにあなたはいつか死んでしまう存在。でも私の心の中で永遠に生き続ける。私が死ぬそのときまで ―――…………… ―――私は決めた。逃げないって。逃げないで失う痛みと向かい合って生きて行こうって ―――俺も決めたよ。俺も逃げない。向かい合う。誰よりも何よりも。俺とお前の未来のために そして軽くキスをした いつか別れがくる それは避けようの無い事実 受け入れなければならない現実 それでも二人でこの恋の行方を刻んでいこう 二人で大切な思い出を刻んでいこう いつか来るその日まで――――――――――