「こいつで終いだなぁ?イプシロンよぉ!」 エクセルは右手に握っている剣を、目の前に横たわっているイプシロンへと突き立てる。 それは確実に、心臓を貫き、死に至らしめる・・・筈だった。 だが、エクセルの握っている剣は半分程の所で先が無くなっている。 彼の獲物は、何故か折られている。 「あ゙ぁ゙?!」 エクセルは先ほど弾き飛ばした彼の獲物へと目をやった。 ソレは飛ばされたままの状態で、地面に刺さっている。 再びイプシロンを見る。 だが、彼は先ほどから動いた様子は無い エクセルは使い物にならない獲物を投げ捨て、左手持っていたもう一本の剣を再び振り上げる。 「図に乗るなよ?出来損ないが」 今まさに振り下ろそうとしていたところに、イプシロンが口を開いた。 だが、ソレは今までの口調とは違い、どこか荒々しい。 「オレが出来損ない?どういう意味だ?あ゙?!」 エクセルは顔を顰める。 この糞餓鬼に出来損ないと呼ばれる理由はない。 確かに、この体はイプシロンのクローンだ。 だが今、エクセルは彼を殺さんとしている。 だったら何が出来損ないのか・・・。 皆目見当がつかない。 「ふ・・・ははははは!」 立ち上がりながら笑う、声高々に。 ソレは、エクセルの笑い方によく似ている。 いや、笑い方だけではない、喋り方も・・・。 いくら生まれ変わりと言っても、喋り方まで似るものだろうか? 可能性として否定は出来ないが、その確立はあまりにも低いだろう。 第一、以前と今では明らかに別人である。 以前の彼は、ここまで声を上げて笑うことはなかった筈だ。 「お前は・・・・・違うな!」 エクセルは気づいた。 今自分の前に立っている者・・・。 身体はイプシロンの物だが、精神はイプシロンではない。 「やっと気づいたか・・・。だが、俺が何者かは分ってねーよーだなぁ?」 彼の言うとおり、誰の精神が乗り移っているのか、エクセルには分らない。 いや、見当はついているが、ソレを認めることは許されない。 「教えてやろーか?・・・俺はお前だ  尤も、俺とお前、どっちがオリジナルかは分らねーが・・・」 エクセルの予想は的中した。 彼もまた、イクシード・エクセル(以下イクシード)だったのだ。 エクセルの精神はPF内に留められ、イプシロンに憑依し、そのクローンを生成し、ソレを我が身体とした。 だとすれば、イプシロンに憑依した際に思念が残り、ソレが自我を持ったと考えられる。 だが奴は俺を出来損ないと言った。 となれば、思念から生まれたのは俺なのか・・・? 「ふん、ま、どっちでも構わねぇ・・・  生き残った方がオリジナル、手っ取り早くていいじゃねーか・・・なぁ?」 そう言うとイクシードは、感覚を確かめるように握り拳を作った。 刹那、彼の周りを黒いオーラの様なものが包み込んだ。 ソレは次第に背後へと集まっていき、形を成す。 まるで翼の様に。 そして、エクセルと同じように体内の気で獲物を形成する。 「・・・そうだな・・・同じ存在は2つもいらねぇ・・・  俺は俺一人で十分だ!」 吐き捨てるようにそう言うと、エクセルもまた、獲物を出す。